【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第2節】ユーノ・スクライアの物語。(後編)
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、一体どうしたものか』と思案に暮れていると、女は目に涙すらにじませながらこう続けました。
「あの小型艇の所有権は私にあるようですが、あれもあなた方にお譲りします。ですから……どうか、お願いします」
その小型艇は、数年前の「型落ち」ではありましたが、よく整備されたものでした。普通に売り払うだけでも、単なる「孕ませた女への手切れ金」としては、全くあり得ないほどの額になることでしょう。
それを『丸ごと持参金として差し出す』と言っているのですから、スクライア一族の側には何の損もありませんし、正直に言えば、ちょうど「手持ちの小型艇」が随分と傷んで来たところでもあります。
もちろん、問いただしたいことは幾らでもありましたが、ハドロはあえてそれらを飲み込み、女の願いをそのまま叶えてあげることにしました。
「解ったよ。君がそこまで言うのなら、そういうことにしよう」
「……本当に? いいんですか?」
「うむ。しかし、スクライア一族に加わるのであれば、名簿に君の名前を乗せなければならない。だから、まず名前を教えてはくれないかな?」
名前を問われると、女はまた俯き、口を閉ざしてしまいます。
「何なら、今日から新しい名前に改名しても良いんだよ」
ハドロはあえて『偽名でも構わない』という言い方はしませんでした。
すると、女はしばらく考え込んでから、こう答えました。
「それでは、私のことは今日から、アディ・モナスと呼んでください」
それは、明らかに「アディムナ・サランディス」から取った、「ADIMNA S.」のMとNの間に母音のOをひとつ補っただけの名前です。それは、『彼女の歌を聴きながら』というこの状況下では「誰にでも偽名と解るほどの、あからさまな偽名」でしたが、それでも、ハドロは少しも気にしませんでした。
それどころか、いつもどおりの穏やかな口調で、改めてスクライア一族について、アディに次のような一連の説明をします。
まず、スクライア一族はかつて、管理局の「最高評議会議長」オルランド・マドリガル本人から「ある種の治外法権」を認められたのだ、ということ。
だから、一族の構成員になれば、もう当局に素性を調べられる心配も無く、あからさまな犯罪者にでもならない限り、当局に身柄を拘束される心配も無い、ということ。
統合戦争の時代には、何か財宝をため込んでいるとでも勘違いされたのか、『当時の長老が何者かに拉致されてそのまま「帰らぬ人」になった』などという事件もあったが、今ではもうそんな物騒な話も無く、まして一般の構成員ならば、なおのこと、そんな危険な目に遭う心配は無い、ということ。
また、一族は管理局にいろいろと便宜を図ってもらって
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