【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第1節】ユーノ・スクライアの物語。(前編)
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いう意見も出ましたが、当時のベルカ社会の常識からすれば、不要になった人間はただその場で殺してしまうだけで、わざわざ他の世界に捨てたりはしていなかったはずです。
すぐに移民団の「第二陣」が来て、合流できる予定だったのでしょうか。あるいは、次元航行船の事故による偶発的な「漂着」だったのでしょうか。
疑問は尽きませんでしたが、文字資料が出土しない限り、当時の具体的な事情など特定できるはずもありませんでした。
また、それはそれとして、ベルカ系の人々が築いた集落ならば、一般の民家以外にも、必ずひとつは聖堂か集会場のような「特別な建物」があったはずです。
それは、3月も半ばを過ぎてから、ようやく見つかりました。
その施設は、居住区から少し北に離れた丘陵の裾に「半地下式」で築かれていた上に、ちょっとした土砂崩れで、その入り口も土砂とその上に伸びた蔓草で覆われてしまっていたため、発見が遅れたのです。
土砂崩れの方は当時のものではなく、崩れてからまだ百年とは経っていない様子でしたが、正確な年代までは解りませんでした。突発的な豪雨か、あるいは地震でもあったのかも知れません。
スクライア一族の人々は、その蔓草と土砂を取り払い、ほとんど「隠し扉」のようなその入り口を慎重に「アンロックの魔法」で開けました。
どうやら天然の洞窟をそのままに利用した施設のようです。床には下り階段が刻まれていましたが、壁や天井は自然の岩肌のままでした。どこかに通風孔でもあるのか、空気も特に澱んではいません。
階段を下った先は意外と広い地下室で、東側には質素ながらも祭壇があり、北東の隅には司祭用の演壇のようなものまで置いてありました。その演壇の引き出しの中を調べてみると、一冊の書物が出て来ます。
初めての「まとまった文字資料」の出現に、一同の期待は膨らみました。
しかし、その本は、およそ750年も前の「お世辞にも良質とは言えない紙質」の本で、その上、保存魔法のひとつすらかけられてはいませんでした。今では「ただ風が吹いただけでもボロボロと崩れてしまいそうなほど」のヒドい状態です。
一同はその書物を外へ持ち出すことを諦め、透視スキャン用の装置の方を、その地下室の中にまで運び込むことにしました。
『大型の装置を一旦分解し、人の手で担いで狭い階段を降り、そこでまた装置を組み立てる』というのは、相当に手間のかかる作業だったのですが、しかし、その結果は「全くの期待外れ」でした。その書物の内容は、本職の司祭ならば誰もが丸暗記しているような、ごく当たり前の「古代ベルカ式の祈りの言葉」ばかりだったのです。
おそらく、移民団の中には、本職の司祭がいなかったので、その役を割り振られた人物が、必要に
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