【プロローグ】新暦65年から94年までの出来事。
【第1章】無印とA'sの補完、および、後日譚。
【第1節】ユーノ・スクライアの物語。(前編)
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落の居住区だったようです。
その居住区の東側には広大な農地の跡が、西側にはそれなりに広い墓地の跡がありました。そこには、風化した墓標らしき石板が優に百枚以上も林立しています。
ハドロの率いる支族は、自前の次元航行船を軌道上に残したまま、当の遺跡からは少しだけ距離を取った場所にキャンプ地を設けました。
まずは年代を測定した結果、その小さな集落が築かれたのは、今からざっと750年ほど前のことだと解りました。次に、その750年の間に降り積もった土砂を取り除き、可能な範囲内で「当時の集落の状況」を再現します。
建材には、基本的に現地の石材が使われており、元の世界から何かが大量に持ち込まれたような形跡は、特に見当たりませんでした。最初から、一時的な「居留」のつもりだったのでしょうか。
しかし、それにしては、墓標の数が多すぎます。
試しに、墓をひとつ掘り起こして調べてみると、どうやら遺体は棺も何も使わず、ほぼ普段着のまま無造作に土の中に埋められていたようです。周囲の土壌が酸性だったことも手伝って、もう骨までもが相当に腐食していました。
この分だと、完全な骨格など一つも残ってはいないでしょうし、また、おそらくは遺伝子などの採取も不可能でしょう。
もし骨格や遺伝子などに顕著な特徴があれば、彼等がどの世界から来たのかを特定する材料にもなるのですが、どうやら、現状では、遺体そのものからそうした判断材料を得ることは難しいようです。
一方、墓標として使われていた石板は、どれもこれも相当に風化しており、そこに刻まれていた文字も、もう大半が摩滅してしまっていましたが、それらの文字を何とか解読してみると、それは意外にも古代ベルカ文字でした。
しかし、彼等の知る限り、古代ベルカ人がこんな辺境の世界にまで「直接に」足を伸ばしていたという記録はありません。
「ただベルカ文字を習い覚えただけの、他の世界の人々」だったのではないか、という意見もありましたが、墓標の解読を進めてみると、そこに刻まれていた人名は、みな当時のベルカ世界で実際によく使われていた名前ばかりでした。
墓標はいずれも簡素な造りで、名前以外の情報は何も書き込まれていません。
あるいは、同じベルカ人でも、ベルカ世界から直接にやって来た人々ではなく、どこか別の植民地から「さらなる植民」を試みた人々だったのでしょうか。
調べてみると、住居の方もみな簡素な造りのものばかりでした。最低限の生活はできていたようですが、これでは、本当に「最低限」のことしかできません。
一言で言って、最初から「永住」をするつもりで来たにしては、移民団の「初期装備」があまりにも貧弱でした。
「移民」ではなく、「棄民」や「流刑」の類だったのではないか、と
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