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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第176話:許して進む
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絶えずクリスの事を気遣い、自分の事を後回しにしてクリスの事を何よりも優先してきた。だがそれが逆に、クリスの事を苦しめていたと言われて透は自分のこれまでの行動が無駄だったと知り涙を流した。
声も無く静かに涙を零す透。ソーニャはそんな彼に寄り添い、ハンカチで流れる涙を拭いながら優しく話し掛けた。
「透、もうクリスはあなたに守られてばかりの弱い子じゃないわ。前に久し振りに会った時に思った。あの子も強く育ってる。もう子供じゃない。少なくとも、あなたの苦しみを一緒に背負うだけの強さはもう身に着けてる。あなたもそろそろ……自分の事、許してあげたら?」
ソーニャは話していた漠然と感じていた。自身にとって仇とも言える相手を許した透は、未だに自分自身を許していないのだ。小さかった子供の頃、自分の感情を爆発させ結果クリスを怖がらせてしまった自分を、透は許す事が出来なかった。だから彼は自身に降りかかる苦難の全てを発散させずに背負い続ける。それが彼にとって、自分自身に対する罰だからだ。
しかしあれから時は流れ、クリス自身はその時の事を忘れてすらいた。もう、透が自分を責め続ける必要は無い。彼はもう十分に咎は受けた。
「そうだよ、透。怒っちゃいけないなんて、そんなの絶対おかしいよ。それにそいつ、クリスの事も傷付けようとした奴らの仲間なんだろ? そんな奴怒られて当然だよ。俺だったら一発ぶん殴ってるね」
難しい事は子供ながらに理解できていなかったステファンだが、そんな彼でも怒りを封じたと言う透が間違っている事だけは分かった。何より、自分の為ではなくとも誰かの為に怒るのは、それだけその相手を想っている事の証明となる。それを封じる必要など何処にもない。
ソーニャの優しい言葉をステファンの純粋な言葉が、透の心に降り積もっていた重りを退かし目に掛かっていた靄を晴らしてくれる。迷いが晴れた彼は、先程とは違う涙を流しながらメモ帳にペンを走らせた。
〔2人共……ありがとう。僕、もう一度クリスと話してみる。とりあえずまずは、あの時叩いちゃった事を謝って、それからこれまでの事とかも全部〕
そうメモ帳に書く透の顔に、もう影は見られない。晴れやかになった彼の表情を見て、ソーニャとステファンの2人ももう大丈夫と顔を見合わせ頷いた。
場に穏やかな空気が流れたかと思ったその時、突如壁が破裂した。慌てて透がそちらを見れば、そこには壁に穴を開けて入ってくる無数のアルカノイズの姿があった。
アルカノイズ出現の報は即座に本部にも伝わった。
『第7区域に、アルカノイズの反応を検知ッ! グロウ=メイジは即時対応をッ!』
『響ちゃん達もそちらへ向かっているわッ!』
『避難誘導の要請をお願いします』
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