暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第176話:許して進む
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た事では無いが、しかしステファンの行動でソーニャの頭も冷静に物事を考えられるようになった。その冷静になった頭で、彼女は今度は透のその考えを諫めた。

「ねぇ透? 仮にだけど、クリスの前からあなたが居なくなって、あの子が笑顔で居られると思う?」

 ソーニャからの問いに、透は口も利けないのに何かを言い淀む様に口をもごもごと動かす。それだけで、彼も本当は分かっている事を2人は理解した。

 本当は透も、自分がクリスから離れる事は逆効果でしかない事を理解している。だが迷いに迷って、これまでの人生で積み重なって来た彼の心の傷は、彼にそんな判断をさせてしまう程に彼自身を苛んでいたのだ。行き過ぎた自己犠牲の弊害とも言えよう。

 透が自分で気付けないのなら、自分達がそれに気付かせる。それが嘗て助ける事が出来ず過酷な運命を背負わせてしまった事への報いであり、そして掛け替えのない弟を助けられた事に対する恩返しであるとソーニャは考えていた。

「よく聞いて、透。クリスが本当に傷付いたのは、あなたがあの男を守ったからでも彼女の事を叩いたからでもない。あなたが1人で勝手に全てを背負い込んで、それをクリスに触れさせないように離れたからよ。少なくとも私はそう思うわ」
「!?」

 それは今までの透の生き方を全力で否定する様な言葉であった。クリスを傷付けないようにしてきた事が結果的にクリスを傷付けた。透自身それは理解しているが、その根本となる部分を彼自身が履き違えていたのだ。
 驚愕に目を見開き固まる透に、ソーニャは更に言葉を続けた。長い年月で曇った彼の目を覚まさせる為に。

「確かにあなたは今までクリスの事を守って来たのかもしれない。でも透、あなたはとても大事な事を忘れてる。クリスを守ろうとしてあなた自身が傷付いた事に対して、あの子がどう思って来たのか。それを想像した事、ある?」

 ソーニャからの言葉に透は愕然となり、項垂れると力無く首を左右に振った。取るは今までクリスを守る事と己の気持ちを押さえ、難い相手でも許す事に全力を出すあまり、守られた後クリス自身がどう思っているかを考えた事が無かったのだ。彼にとって、クリスが居てくれる事だけが希望だったから。

「これは私の想像だけど、多分クリスは今まで心の何処かで苦しい思いをしてきた筈よ。傷付くあなたを後ろから見ている事が、辛かったと思う。何より、あなたが自分に弱い所を見せない事に、不安を感じてたんじゃないかしら?」

 弱さを見せない事は強さを表しているのかもしれない。だが同時に、それは相手を完全には信用していない事をも連想させた。勿論透自身はクリスの事を愛し、彼女に全幅の信頼と信用を寄せている。だが肝心のクリスにはそれが完全には伝わっていなかった。
 例え死に掛けようがどうなろうが、透は
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