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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第176話:許して進む
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ペンを走らせ、その胸の内を彼女に明かした。
〔僕は、またクリスを怖がらせた。クリスに酷い事をした。もう絶対、クリスにそんな事はしないって誓ったのに、あの時はクリスに酷い事をさせたくなくて、咄嗟に〕
「また?」
ソーニャは透が虐められているクリスを見て怒った時の事を知らない。だから彼が”また”と述べた理由が分からず思わず聞き返した。その様子に透は、自分が過去に何をしたのかを2人に告げた。
〔まだ小さかった頃、クリスが虐められてる場面に出くわして〕
〔それを見て僕、思わずカッとなってその子達に暴力を振るっちゃったんだ〕
〔それでクリスを怖がらせちゃって、彼女の心を傷付けた〕
〔だから僕はもう、怒らないって決めたんだ。僕が怒ると、周りの人を傷付けちゃう。それなら僕は怒りを捨てる。僕1人が傷付いて皆が、クリスが笑顔で居られるならそれでいいから〕
恐ろしい程の壮絶な自己犠牲の精神。それを事もあろうに幼い時分で形成した事が信じられず、ソーニャもステファンも思わず言葉を失った。
それは果たしてどれ程の覚悟だっただろうか。自分の記憶が確かなら、透がバルベルデで捕虜になったのは彼が僅か10歳前後の頃。それ以前に、彼は大人である自分顔負けの覚悟を胸に自己犠牲の精神を宿して生きてきたのだ。その精神力は驚愕に値するとソーニャは恐怖に近い感情を感じた。
が、それが結局はクリスを傷付ける原因となってしまったのは何たる皮肉か。透は、何をしてもクリスの事を傷付けてしまう自分が情けなくて思わず自嘲の笑みを浮かべた。
〔僕、ダメな男だね。何をしてもクリスを傷付けちゃうんだから。彼女をこれ以上傷付けるくらいなら、いっその事このまま――〕
クリスが幸せになってくれるならそれだけで構わないと、透は彼女の前から姿を消す事さえ考え出す。だがそれを引き留めたのは、子供の頃の彼を良く知るソーニャ…………ではなく、彼女の弟であるステファンだった。ステファンは透がメモ帳に全てを書き切る前に、彼が書こうとしている内容を察すると勢いよく立ち上がり掴みかかってそれ以上書くのを止めさせた。
「そんなの可笑しいだろッ! 何だってそこまでしなくちゃいけないんだよッ!」
「ステファン、落ち着いてッ!」
突然大声を張り上げたステファンに、店内の他の客は何事かと彼らの居るテーブルに目を向ける。このままだと他の客にも店にも迷惑が掛かると、ソーニャは弟を宥めて椅子に座らせた。ステファンはまだ感情が収まらないのか何か言いたそうにしていたが、姉が傍に居る手前あまり暴れる事も出来ないからか不服そうに唸りながら座り直す。
弟が取り合えず大人しくなったのを見て、ソーニャはそっと小さく息を吐く。他の客が居る中でいきなり大声を上げる事は決して褒められ
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