第一章
[2]次話
ハルニレ
まだ神々アイヌの間でカムイと呼ばれる彼等が天地を創り出していた時のことである。
その仕事を主に進めていた創造を司るカムイであるコタンカムイ、背筋を伸ばした白い髪と髭の老人の姿をした彼は様々なものを生み出していた、だが。
火を出してそれを生み出しかつこれから生み出す人間達に対してそれを授けようと思ってドロノキを用いたが。
「どうもな」
「ドロノキではですか」
「上手くいかぬ」
コタンカムイは妻のカムイに困った顔で話した、見れば妻の姿は優しそうな老婆のものである。
「これがな」
「どうなっていますか?」
「まず白や黒の木屑になって飛び散るばかりでな」
ドロノキはというのだ。
「しかもそれが全部おかしなものに変わってしまう」
「といいますと」
「魔人だの男や女が好きなカムイや疱瘡のカムイにだ」
「なってしまうのですね」
「そうだ、これではだ」
とてもというのだ。
「用いることは出来ぬ」
「それではです」
妻は夫の話をここまで聞いて言った。
「ドロノキは用いないことです」
「火についてはか」
「そして他の木をです」
「用いるべきか」
「そう思いますが」
「そうだな、このままドロノキを用いてもな」
そうしてもとだ、コタンカムイは妻のカムイの言葉に頷いて述べた。天界の自分達の家で様々なものを生み出しつつのことである。
「よいことはない」
「そうですね」
「駄目とはっきりしたことならな」
「しないことですね」
「その通りだ」
まさにというのだ。
「そうすべきだ」
「ですから」
「別の木でするべきか」
「今生み出されている木の中でこれはというものをです」
「用いてだな」
「しっかりとした台と棒を作って」
その木でというのだ。
「そうしてです」
「やってみるべきか」
「そうした木を片っ端から試していけば」
「やがて火を熾すに相応しい火が見付かるか」
「そうなるかと」
「そうだな、ではやってみよう」
コタンカムイも頷いてだった。
彼は実際に色々な木で試してみた、そしてハルニレの木でだった。
台と棒を作ってこすり合わせると台の穴の部分と棒の先が擦れ合いそこから煙が出てそうしてだった。
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