第二章
[8]前話
そこで好きなだけ漁をして食べた、海の中は陸から漁をするよりも遥かに魚が多く手に入れやすくてだった。
セドナは食事に困らなかった、そして海の神と出会い結婚すると青い髪と目を持つこの神に尋ねられた。
「お前の夢は何だ」
「私の夢?」
「そうだ、誰でも夢がある」
海の神はこう言った。
「だからだ」
「私の夢は何か」
「それを聞きたいが」
「このままずっと好きなだけ食べられたら」
セドナは海の神に笑顔で答えた。
「それでいいわ」
「それでは今ではないか」
「そう、今とても満足しているわ」
「夢が適ってか」
「陸地で暮らしていた頃から出来ていたし」
好きなだけ食べられてというのだ。
「今もね」
「好きなだけ食べられてか」
「満足しているわ」
「ではもうこれ以上はか」
「求めないわ」
こう夫に言うのだった、海底の自分達の家の中で。
「もうね」
「そうか、無欲だな」
「いえ、好きなだけ食べられることは」
このことはとだ、セドナは反論した。
「やっぱりね」
「欲があることか」
「私はかなり食べるし」
このことは自覚している。
「それでいつも好きなだけとなると」
「無欲ではないか」
「決してね。けれどね」
「その願いを適えられていてか」
「私はとてもね」
「満足しているか」
「夢が適って」
「そうか、わかった」
海の神は妻の話をここまで聞いて頷いた。
「そなたの考えがな」
「わかってくれたのね」
「夢が適っていることもな、私の夢は伴侶と家を得ることだったが」
「私と結婚して」
「家ももうけたしな」
「夢が適っているのね」
「そうなっている、夢はそれぞれだな」
「そうね、そういえばお父さんとお母さんの夢は何かしら」
セドナはここで今も陸地にいる自分の両親のことを思い出した。
「少し聞いてみようかしら」
「そうするか」
「ええ、一度ね」
夫に応え実際に両親の家に行って尋ねた、すると二人は孫の顔が見ることがそれだと答えた。するとセドナは夫と共に二人の間に生まれた息子達を見せた、すると両親は夢が適ったとそれぞれ笑顔になった。
セドナと彼女の周りの誰もが夢が適った、それぞれの夢がそうなった。イヌイットに伝わる古い話である。
セドナの夢 完
2023・9・14
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