第二章
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彼はその間にだった。
「おい、それは本当か!?」
「はい、昨日です」
「休暇を取って海外旅行に行かれました」
「そうされました」
「嘘だろ」
渡部は思わずこの言葉を出した。
「今どんな時期だ」
「はい、我が社の不祥事で」
「それで世間の批判が集中しています」
「マスコミだけでなくネットでもです」
「かなり批判されています」
「こんな状況だぞ」
渡部は信じられないという顔でこうも言った。
「とてもだ」
「はい、今の状況で、です」
「休暇を取って海外旅行はありません」
「社長だというのに」
「有り得ないです」
「何考えているんだあいつは」
渡部はこうも言った。
「こんな状況なのにな」
「全くです」
「しかも連絡がつきません」
「完全にプライベートを楽しんでいます」
「そうしています」
「社長がこんな時に会社にいなくてどうするんだ」
渡部は今は項垂れるばかりであった、それで言うのだった。
「幾らお飾りでもな」
「はい、まさかです」
「こんなことをするとはです」
「夢にも思いませんでした」
重役達も唖然とするばかりだった、そしてこのこともマスコミそれにネットで知られ会社はさらに批判された。
だが帰国した値頃はこの批判そして不祥事についてもこう言うのだった。
「私にその権限ないですから」
「いや、お前社長だろ」
「社長にその権限がないってないだろ」
「無責任過ぎるだろ」
「っていうかこいつ無能か?」
「こんなのが社長が」
「こんなのだと俺でも出来るぞ」
多くの者は値頃のその発言に呆れ怒った、それで批判はさらに高まり。
会社の株価は暴落し取引先は取引を次々と打ち切った、会社の業績は急激に悪化し底を割ったかの様になった。
それでだ、社内でも値頃それに彼を擁立した渡部達も批判され。
株主総会でもだ、彼等は吊し上げられた。
「何をやっているんだ!」
「このままでは会社が潰れるぞ!」
「あんな奴誰が社長にした!」
「経営陣は責任を取れ!」
「早く何とかしろ!」
「辞めろ!」
総会は大荒れだった、そして。
その総会でもだ、値頃はこう言うだけだった。
「ですから私にその権限ないですから」
「な、こんな時でもか」
「こいつこう言うのか」
「何なんだこいつ」
「冗談抜きで有り得ないだろ」
渡部も他の重役達も最早言葉がなかった、そしてだった。
経営陣への批判は最早止められず社内でも堂々と行われる様になってだった。渡部達は辞表を出してだった。
値頃もそうした、経営陣は刷新され会社は倒産寸前にまで陥ったがそこから再建されることになった。
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