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冥王来訪
第二部 1978年
迫る危機
慮外 その2
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あった。
かくて、昼前からの役所巡りは、半日にして解決した。
 ちょうど、カフェテリアの前を通りかかった時である。
「ドクトル木原、ちょっと」
キルケは、カフェテリアに寄りたいようだった。
「何だ、何か用か」
 マサキは、役所詣でが終わったら、すぐに帰るつもりだった。
予定を狂わされて、不機嫌にいう。
「お茶でもしていかない?」
「わかったよ」
 マサキは渋々、カフェテリアのテラス席に座った。
そっと、キルケの側へ座って、彼女の顔をさしのぞいた。  
夕闇のせいか、キルケの顔は、宝石のように奇麗である。
「悪いけど、あと少し付き合ってもらえる」
キルケの申し出に、マサキは不思議に思いながらも、
「構わないが、一体どこに行くのだ」  
「ここ、ボンの市街地からキロほど南に行った、ハルトベルク。
そこにある、おじいさまの自宅よ」 
「ハルトベルク? お前の祖父の家だと?」
マサキは、キルケの言葉に思わず目を見張ってしまった。
「貴方と天のゼオライマーの活躍で、欧州はBETAの恐怖から救われたわ。
そのことについての……、今までの埋め合わせをしたくてね……」
そういったキルケの目に、邪悪な光が一瞬浮かび、直ぐに困惑したような表情を浮かんだ。


 ボンの夜を行くには、懐中電灯は要らなかった。
歳暮のせいか、町の灯は様々な色彩をもち、家々の灯は赤く道を染めて、ざわめきを靄々(あいあい)と煌めかせていた。
冬の空には、一粒一粒に、星が浮かんでいた。
「何やら、騒々しいがどうした」
 シュタインホフ将軍の用意した車に乗りながら、マサキは、運転手に話しかけた。
運転手がそれに答えて、
「もうすぐクリスマスです。
BETAもいなくなったことですし、5年ぶりの静かなクリスマスを楽しんでいるのでしょう」
――なるほど、市街地にかかると、賑やかな雑踏の中には、かならず人の姿が見えた。
もう12月、そんな時期なのかと、マサキは、一人心の中で今までの事を振り返っていた。
 シュタインホフ将軍はその夜、彼が帰国の暇乞(いとまご)いに来るというので、心待ちに待ちわびていたらしい。
屋敷中のの灯りは、マサキを迎えた。
 主客、夜食を共にした。
また西ドイツの高官から、贈り物の連絡などあった。
「ご進物は、明朝、御出発までに、ホテルへお届けます」
 マサキは、その内容だけを聞いた。
ゾーリンゲンの指揮刀や、ニンフェンブルクの陶器などである。
「鄭重な扱い、痛み入る」
 マサキはありがたさの余り、感激するばかりであった。
そして(いとま)を告げかけると、
「いや待ちたまえ。
君とは、まだ申し交わした約束が残っておる」
といって、老将軍は、マサキをうながして屋敷の奥へともなった。
「木原博士、さあ、
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