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Dies irae~Apocalypsis serpens~(旧:影は黄金の腹心で水銀の親友)
第二十四話 我思う、故に我あり
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とも避けることも敵わないのは一目瞭然である。

「クッ……ハアアァァァァ――――――!!!」

それでもなお剣を構え気概を見せる。足りない、まだ足りない。いくら集中しようとも限界まで力量を高めようとも足元にも及びはしない。そんなことは分かっている。だがそれで諦めれるほど螢は賢しくはない。

「さあ、見せてみるが良い。貴様が真に英雄足らんとして見せるならこれを超えて見せろ」

対するザミエルは気負いなどというものは無い。当然だ、片手間ではなくとも全力というわけでもない。適当な対応こそしないが真摯に向きあうほどの相手でもないのだから。
故に、この場においては櫻井螢の悪運は強かったというべきだろう。

「―――ん?」

ルーンの文字が他ならぬザミエル自身の手によって止められる。そして数拍遅れて螢もこの場に起きた変化を理解した。

「あ……」

巻き起こる圧倒的存在感。そしてこの場で感じられる魂の拡散。スワスチカは開き、かの黄金の獅子ラインハルト・ハイドリヒが降り立ったことを理解する。

「フム、正直ここで消し去るつもりだったが、開いたのなら話は別だ。今は命を大事にしろ。貴様は第八に捧げると、この私が決定した」

臨戦状態、それも人生で最も全力だったと断言してもいい状態だったにも関わらず有るか無しかの虚を衝かれ、目の前に立たれる。螢の肩に手を置き、挙句労いとも言えなくもない言葉を投げかける。
櫻井螢は気が付く。元来、彼女の間合いは近距離の攻防こそに長けているのだと。故に、最早この試合は勝負あった。

「寝ていろ。自殺などという詰まらんことはするなよ。私が手ずから貴様を贄にするのだからな」

「――――――くあッ!?」

この決着は引き延ばされることとなった。



******



―――独白と思考の果て―――

アルフレート・ヘルムート・ナウヨックスは己の人生が違和感で埋め尽くされていることに幼き頃から自覚していた。ドイツ帝国の一都市で生まれ大学を出て、旧知のラインハルトに呼ばれてナチス党の諜報機関であるSD(保安諜報部)に入る。そして、暗殺を行い、戦場で戦い、聖遺物に身を染める。客観的に見れば平凡とは決して言わないが圧倒的に非凡ということもありはしない。
ラインハルトに仕えながらも屈しない。あったことも無い詐欺師の政治家を親友とまで言う。よく考えずともふと過去を突き詰めれば自分の矛盾に大きく戸惑った。
誰に習った訳でもないのに魔の真髄に迫る魔導を使い、大隊長ですら屈する彼に側仕えする。誰もが嫌っている副首領と気を許すことすら容易く行う。何故?

『思えば昔から解することが出来ないものが多かった』

彼の考えている常識はこの世界(・・・・)では違和感しか感じれなかった。無
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