第一章
[2]次話
クライマックスが終わって
根室寿はこの時五月蠅かった、誰が見てもそうだった。
「阪神日本シリーズ優勝!!」
「わかったからもう静かにしろよ」
「ここんとこずっとそう言ってるよな」
「そんなこと誰でも知ってるよ」
「だから静かにしろ」
「もう言うな」
中学校のクラスでもこう言われていた。
「嬉しいのはわかるからな」
「もう言うなよ」
「阪神シリーズ優勝ってな」
「言わなくても知ってるんだよ」
「日本中の話題だからな」
「いや、本当に嬉しいから」
寿は友人達に満面の笑みで答えた。
「ついついね」
「気持ちはわかるけれどな」
「俺達だって関西人だしな」
「阪神ファンだよ」
「けれどな」
「お前は虎キチの中の虎キチでな」
「それが過ぎるんだよ」
「自分でもわかってるよ」
自覚はあるのだ。
「何しろ僕の身体にはね」
「黒と黄色の液が流れてるんだよな」
「血液の他に」
「阪神液がな」
「そうなんだな」
「そう、だからね」
それでというのだ。
「阪神からは切っても切れない」
「下着も黒と黄色だしな」
「シャツとトランクスも」
「外出の時はいつも阪神帽被って」
「猛虎魂を忘れないんだな」
「だからだよ」
それ故にというのだ。
「自覚しているよ、虎キチの中の虎キチだって」
「それで言うんだな」
「シリーズ進出が嬉しいって」
「そうな」
「そう、そしてね」
そのうえでというのだ。
「シリーズもだよ」
「制覇か」
「そうして日本一か」
「そうなるんだな」
「三十八年振りに」
その歳月のことも話した。
「果たすよ」
「そうなんだな」
「それはわかったよ」
「わかったから静かにしろ」
「いい加減うざいからな」
「努力はするよ」
寿も言われて頷いた、彼は阪神への愛情以外はまともと言える人間なのでそれは聞いて務めて言わない様にした。
だが部活でもだった。
自分のロッカーの扉に張った阪神タイガースのマーク、虎のそれを見てにまあと笑って同級生の部長に言われた、彼は中三なので部長も同級生なのだ。
「気持ち悪いからね」
「気持ち悪い?」
「シリーズ進出が嬉しいのはわかるけれど」
それでもというのだ。
「幾ら何でもね」
「気持ち悪いんだ」
「悪いよ」
はっきりと言われた。
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