暁 〜小説投稿サイト〜
X ーthe another storyー
第四十話 憧憬その十三

[8]前話 [2]次話
「桜塚護のことは」
「そう思われますか」
「うん、そしてね」
 そのうえでというのだ。
「君は僕達と一緒にいられるよ」
「皆さんと」
「そうなれるよ」
「僕はずっと一人でした」
 微笑んでいるがそこに少しばかりの寂寥を込めて話した。
「受け継いでから、そして」
「三人になって」
「また一人に戻り」
「今は僕達と一緒にいるね」
「温かく楽しいです」
 今自分がいる場所はというのだ。
「非常に。ですが」
「それでもだね」
「僕はそうします」
「僕達の中にはいないんだね」
「もう少しだけいさせてもらいたいですが」
「ずっとではないんだね」
「ええ。ただ牙暁君にもです」
 また目を開いている彼を見て話した。
「甘味屋さんに案内させてもらいまして」
「お汁粉化善哉をだね」
「ご馳走したかったです」
「他の皆と一緒に」
「これから紹介させてもらいますが」
「僕はずっと夢の中にいるから」
 だからだとだ、牙暁は星史郎のその申し出にこう返した。
「食べることはないから」
「いいのですか」
「うん、無理だからね」
 それはというのだ。
「いいよ」
「そうですか」
「気持ちだけ受け取らせてもらったよ」
「それで充分ですか」
「うん、しかし君は」
 また星史郎を見て話した。
「実は誰かを」
「ないですよ」
 目まで微笑んでの返事だった。
「ですから僕が誰かを好きになることは」
「ないんだね」
「人の痛みを感じることもです」
 このこともというのだ。
「ないですよ」
「そうした心だったね」
「ですから」
「君はやっぱり嘘吐きだね」
 このことをだ、牙暁は星史郎自身に告げた。
「何処までも」
「自覚していますよ」
「そして自覚してだね」
「嘘を言います、ですがその嘘も」
 それもというのだ。
「最後のそれを吐く時がです」
「来ているんだね」
「その相手は決まっています」
 既にというのだ。
「最早」
「彼だね」
「どうでしょうか、ですが」
「それでもなんだ」
「それも最後です」
 嘘を吐くこともというのだ。
「桜塚護もで」
「そのことは素直に申し上げます」
 桜塚護のことはというのだ。
「僕も」
「そしてそのうえで」
「嘘を吐くことも」
「終わりだね」
「嘘を吐くのも疲れますしね」
 こうも言うのだった。
[8]前話 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ