第二章
[8]前話
「つくづく思います」
「いや、ああした人材はそうはです」
坂上は普段の彼を思い出しつつ答えた、苦笑いにならない様に必死になりながらそうしたのだった。
「いないですから」
「天才ですか」
「まあ一種の」
「そうですか、では普段も凄いんですね」
「そうですね」
ある意味と言葉の行間に入れて答えた。
「彼は」
「羨ましいと思います」
「それはどうも」
他社の社員に愛想笑いで応えた、そして。
その後でだ、自分の机でオフになった目でグミを食べている彼を昼食の時間になると牛丼屋に誘って店の中で話した。
「こうした話をされたよ」
「そうですか」
「返答に困った」
「普段の僕はどうか言えないから」
「そうだ、本当に君はな」
牛丼の波を食べつつ言うのだった。
「普段は全くやる気がないな」
「ですから燃えないんで」
「ここぞとならないとか」
「はい」
まさにというのだ。
「ですから」
「全く、まあ君は結果を出しているからな」
いざという時はというのだ。
「いいがな、だがこの話はな」
「僕にしたくて」
「した、覚えておいてくれ」
「わかりました」
桐木も牛丼の波を食べている、そのうえで上司の言葉に応えた。
二人で牛丼を食べると会社に戻った、すると急に大きな仕事が入ってきていた。桐木はその話を聞くとだった。
瞬時に顔が引き締まった、きりっとなって仕事の話を聞いてだった。
それに取り掛かった、抜群の頭の冴えに卓越した知識にだった。
分身しているかの様な動きで仕事を進めていった、坂上はそれを見て他の社員達に話した。
「思えばこのギャップもな」
「いいですね」
「普段は全く動かないですが」
「いざとなれば動く」
「そのギャップもいいですね」
「見ていると」
「そうだな、じゃあ結果も出しているし受け入れるか」
こう言うのだった。
「普段の彼も」
「ですね、それじゃあ」
「一緒に働きましょう」
「彼と」
「そうだ、我々もやるぞ」
こう言って桐木と共に働きその仕事を成功させた、そして普段の彼に戻った桐木に笑顔でまた何かあれば頼むと言ったのだった。
仕事で本気を出す時 完
2023・10・25
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