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第四十話 憧憬その八

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「貴女の過去は」
「言うことはしないわ」
「言えないね」
「ええ、決してね」
 起きている時はうって変わって真剣かつ深刻な顔で答えた。
「それはね」
「そうだね、どうしてもね」
「貴方とこうして会っていても」
 夢の中でというのだ。
「聞こえるかも知れないから」
「言えないね」
「とてもね、けれど貴方はわかっているね」
「わかっているから言うよ」
 これが牙暁の返答だった。
「そしてね」
「こうしてお話もね」
「するよ」
「そうね」
「言われずともだよ」
「私達の間柄ではね」
「わかる様になっているよ」
 目を閉じてしみじみとした顔になって答えた。
「僕もね」
「そうね、私の真の目的も」
「言えないね」
「貴方以外には」
 自分と背中合わせになっている牙暁に話した。
「まだ」
「だから皆にも言わなかったね」
「そうよ。それでもう一人言わなかった」
「彼だね」
「彼が過去を言う時は」
 自分のそれをというのだ。
「きっとね」
「最後だね」
「そうね、運命ではね」
「彼は死なない筈だよ」
「その筈ね」
「うん、けれどね」 
 それでもとだ、牙暁は庚に話した。
「運命はね」
「変わるわね」
「そうなるものだってわかったから」
「若しその時は」
「世を去るのは彼かもね」
「そしてその時は」
「近いよ」
 また目を閉じて庚に話した。
「そのことはね」
「間違いないわね」
「その運命はね」
 間もなく戦いになるというそれはというのだ。
「そうだよ」
「そうね、そしてね」
 そのうえでというのだ。
「彼とはお別れになるわね」
「きっとね」
「嫌いではないわ」
 今度は苦い顔になってだ、庚は話した。
「仲間、お友達としてね」
「地の龍であることとは別にだね」
「彼の人柄がね」
「好きだね」
「きっとあれが本質なのよ」
 彼のその顔を思い出して言うのだった。
「彼のね」
「そしてその本質をだね」
「出していたかったのよ」
「あの時も」
「そうよ、ただね」
「彼の運命がそれを許さないんだ」
「そうね、けれどそれを終わらせる為にも」
 まさにとだ、牙暁に話した。
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