第一章
[2]次話
喋れなくてもわかる
「ワンワン」
「ふわりが喋れたらな」
ケージの中からテレビを観て何かあったのかちょこんと座って鳴いたふわりを見てだ、彼女の飼い主である国咲家の息子洋介は言った。
「あの連中に捨てられなかったか」
「あの連中は問題外だろ」
一家の父親文太はふわりの前の飼い主達の話に応えた。
「どのみちな」
「ふわり捨ててたか」
「自分達の娘でもな」
「新しい娘が生まれたらほったらかしにしたか」
「そんな連中だったからな」
「どのみちか」
「捨てていたぞ」
そうしていたというのだ。
「あの連中はな」
「そうなんだな、しかしな」
息子は父に言った。
「ふわり見てたらな」
「どうしたんだ」
「いや、テレビ観てな」
見れば今もそうしている。
「鳴いたからな」
「喋れたらってか」
「思ったんだな」
「テレビ観て何か言いたいみたいだな」
そのふわりを見つつ父に話した。
「何か」
「それはあるな、犬だって感情があってな」
父もそれはと答えた。
「それでな」
「言いたいことだってあるな」
「ああ、だから鳴くんだ」
そうするというのだ。
「今みたいにな」
「そうだよな」
「そうだ、ただな」
「ただ?」
「喋られなくてもな」
ふわり、彼女がというのだ。
「人間の言葉がな」
「犬の言葉しか喋られなくてもか」
「ある程度でもな」
それでもというのだ。
「ふわりの気持ちはわかるだろ」
「尻尾の羽後金とか表情とか見てな」
「目もだろ」
「わかるよ」
「そうしたものはちゃんと見てな」
そうしてというのだ。
「ふわりの気持ちをな」
「わかることか」
「ああ」
そうだというのだ。
「家族だからな」
「それが大事か」
「それで今はな」
父もテレビを観ているふわりを見て話した。
「じっとテレビ観てるな」
「ちょこんと座ってな」
「鳴いてるな」
「ああ、何でだろうってな」
その様にというのだ。
「思ってるけどな」
「観ろ、今の番組」
テレビのそれをというのだ。
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