第三部 1979年
曙計画の結末
甦る幻影
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をくれていた。
「今から行っても助からない」
彼の2年という長い実戦経験から、それが分かるのだ。
ましてや、冬季だ。
ここヴォロシロフグラードのBETAは10万単位で、カザフスタン西部と比べて、異様に数が多かった。
噂ではウラリスクハイヴからサラトフ、ヴォロネジを抜けて、ウクライナに入ってきたという。
取り残されたチェコスロバキア軍、約2万の軍団は勇猛果敢だった。
要塞級との距離が100メートルを切っても砲兵は退かず、踏みつぶされる寸前までBETAを駆逐した。
後続の戦車隊は、並みいるBETAの群れを踏みつぶしながら、果敢に前進した。
だが、光線級の群れの前に、彼らが頼みの綱とする戦闘ヘリ部隊は失われてしまったのだ。
「チェコスロバキア軍を救援し、浸透突破を実施せよ」
ソ連軍大佐の無茶ともいえる命令。
隊長のユルゲンが思い悩んでいると、副長のヤウク少尉が脇から回線に割り込んできた。
ソ連軍大佐に遠慮したのであろう。
公用語のロシア語ではなく、ドイツ語で尋ねてきた。
「ユルゲン、君はどう思う」
「無駄に兵力を損耗するだけだ。
それと、このまま重金属雲に入ったら、いつも通りの作戦で行く」
「了解!」
果たして、東ドイツ軍の戦術機体は、驚くべき果敢を示した。
BETA梯団も、その一触をうけるや、眠れる虎が立ち上がったような猛気をふるい、両勢、およそ同数の兵が広き地域へ分裂もせず、うずとなって戦い合った。
彼も必死、これも必死、まさに鮮血一色の死闘図だった。
約2万を誇るBETA梯団の中心部まで一気に駆け抜ける東ドイツ戦術機隊。
敵を撃ち倒し、叩きつけて、さんざんに駈け廻った。
「光線級吶喊に入るぞ!全機続け」
そういうと、ユルゲンの乗ったバラライカPFは、背中に突撃砲をしまうべく、右手をのばす。
それと同時に、一振りの長刀を、兵装担架システムから、ビュっと抜き出す。
「了解」
真っ先に、その目標を捉えて、部隊の中心から先頭に向かって駈け抜ける。
猛烈な剣戟を揃えて、ふたたびBETAの先手へ突っかかった。
ユルゲンの猛烈な白刃に答える様に、野火の様に広がりを見せていく戦果。
要撃級の群れを、殷々と唸り声をあげる突撃砲の斉射で、血煙に変えていく。
「ユルゲンを援護、刀を持っている奴は突っ込め!」
全身緑色のファントムが突撃砲を背中にしまうと、両手に長刀を構える。
その刹那、跳躍ユニットのロケットエンジンを限界まで吹かした。
長刀が閃くたびに光線級の体はひしゃげ、飛び散って、ズタズタにされていく。
20匹以上いた光線級は、塩辛みたいにされてしまった。
その砲声もハタと止んだ。
勝敗は一瞬に決したのだ。
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