第四十話 童話の中からその九
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「しかしな」
「それでもやな」
「人望はな」
政治家にはこれも必要だがというのだ、権謀術数や冷酷さでは人はついてこないということである。
「ないからな」
「偉くなってもか」
「最後はな」
「周りに人がおらんか」
「そして敵はな」
「多いな」
「実際敵が多かった」
川上にはというのだ。
「巨人関係者でな」
「追い出された人達やな」
「そや、そんな奴がや」
「その頃の巨人の監督で」
「人格者の様に言われてな」
おぞましいことにこれは事実である。
「その漫画でもな」
「そう描かれてたんやな」
「あんな奴も世の中におる」
中里は心の底から嫌悪感を出して言った。
「残念ながらな」
「ほんま残念やな」
施も実に嫌そうに言った。
「自分も巨人大嫌いやが」
「余計に嫌いになったやろ」
「そんな奴が監督やったんやな」
「ほんま自分だけでな」
その頭にあるものはだ。
「冷酷で無情な」
「薄情どころやないな」
「それを通り越してな」
「無情な人やってんな」
「それで実際は人望もな」
「なかってんな」
「好きな人がおらんかった位や」
敵が多くだ。
「使えんと思ったら平気で切り捨てるしな」
「ものみたいにか」
「人格者とか」
それはというと。
「全くな」
「なかったんやな」
「そうした奴やった」
「一緒にいたくないな」
メルヴィルは心からこの言葉を出した。
「絶対に」
「そやな」
「無茶苦茶嫌な奴やな」
「しかも勝負ごとするとな」
中里は川上のこのことも話した。
「将棋とかな」
「そうするとか」
「勝つまでやったそうや」
「負けず嫌いやな」
「自分が負けるのはな」
それはというのだ。
「ほんまな」
「嫌いでか」
「それでや」
そうした輩でというのだ。
「勝負する人もな」
「嫌やったろうな」
「そうやったと思うわ」
中里もそれはと返した。
「ほんまな」
「それでも聖人になれたんやな」
羅も凄まじく嫌そうに言った。
「昭和の日本では」
「強奪すらなる位やしな」
「倫理観もおかしくなるな」
「そうなって当然やな」
「それで巨人もやな」
川上が長い間監督を務めていたこのチームもというのだ。
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