第四十話 童話の中からその七
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「それやな」
「そうなるな」
「ああ、まあな」
ここで中里はこんなことを言った。
「昔、昭和四十年頃の漫画親戚の家で読んだが」
「偉い古い漫画やな」
昭和四十年と聞いてだ、芥川もそれはと返した。
「随分」
「主人公が金太郎さんでな」
「僕等が今度戦う神霊さんの一柱の」
「熊にも乗っててな」
童話にある通りにというのだ。
「巨人に入って大活躍や」
「ああ、それは胸糞悪い漫画やな」
巨人、邪悪と悪徳と非道と横暴がそのまま具現化しているおぞましささえ持っているこのチームの名前を聞いてだ、芥川は瞬時にこう返した。
「巨人か」
「そや、あの頃はな」
「日本の倫理おかしかったしな」
「巨人が正義でな」
「多くの子供がファンやったな」
巨人軍、大鵬、卵焼きが子供の好きなものであった。言うまでもなく最初が何よりも深刻な問題である。
「それでな」
「日本の倫理観はどんどんおかしくなってたが」
「その漫画もやな」
「巨人が主役で」
主人公が入ったチームでというのだ。
「ライバルは桃太郎さんでな」
「その子と競い合うか」
「そう思ったら」
それがというのだ。
「何と桃太郎さん南海におったんが」
「今のソフトバンクやな」
「それが巨人に入るねん」
「おう、ふざけるなやな」
芥川はまた瞬時に言った。
「そんな糞展開今やったらな」
「大炎上確定やな」
「そもそも巨人が主人公というのが」
昭和の野球漫画ではこれが普通であった、恐ろしいことに。
「あかんけどな」
「それでその巨人がな」
「桃太郎さん強奪してか」
「金太郎さんと一緒にチームにしたんや」
「そうなんやな」
「こうしたふざけた漫画があったわ」
昭和の頃にはというのだ。
「他にも巨人の漫画あったけどな」
「昭和のプロ野球漫画は全部巨人やったな」
水島新司先生以外はほぼそうであった。
「ほんまに」
「それでや」
「そんな悪辣な振る舞いがいいこととして描かれてたか」
「そやってんや」
「いや、この世界にも巨人あるけどな」
野球というスポーツが存在していてだ。
「普通に万年最下位やしな」
「創設以来ずっとな」
そうなっているのだ。それも毎年勝率は二割未満である。
「弱いうえに悪事ばかりする」
「そんなチームやけどな」
「昔はな」
昭和の頃そして平成になっても少し続いていた。
「それがまかり通ってたってな」
「童話の主人公まで汚す様な振る舞いも堂々と行われたか」
「おぞましいことにな」
「いや、そんな漫画あったなんて」
綾乃も仰天していた、他の面々もだった。
「信じられへんわ」
「そやろ、選手強奪がええことってな」
「巨人の悪事が正しいことになるなんて」
「その
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