暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第175話:許して忘れる
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れたクリスは、一つ大きく深呼吸をし唾を飲み込むと、意を決してインターホンを押した。呼び出し音が響いてから暫くし、インターホンからは透の父である航の声が聞こえてくる。
『はい、北上です』
「お、お久し振り、です。クリスです」
『クリスちゃんか、ちょっと待っていなさい』
程無くして玄関が開き、航が顔を出して門の所までやってきた。鍵を開けて門を開いた彼は、そこに居るのがクリス1人と言う事に思わず首を傾げる。
「おや? 君1人かい?」
「は、はい。透は、ちょっと……」
「……何かあったのかな?」
もしや透の身に取り返しのつかない何かが起こったのではないかと危惧し、航の視線が鋭くなる。彼の視線から勘違いさせてしまった事に気付いたクリスは、慌てて誤解を解こうと自分1人でこの場に来た理由を話した。
「違う、違いますッ! アタシが今日1人でここに来たのは、ちょっと、透と一緒に居辛かったからで……」
「居辛い? それは、どう言う…………まぁ立ち話もなんだし、入りなさい」
クリスと透の仲の良さは航も十分理解している。その2人が、態々別行動をするなど余程の理由である。落ち着いて詳しく話を聞く為。航はクリスを中に招き入れリビングでソファーに座らせると紅茶を淹れて彼女に渡した。
「さ、まぁこれでも飲んで」
「ども……」
「それで、何があったのかな?」
渡された紅茶を一口飲み、その温かさで心を落ち着け唇を湿らせると、クリスは最近透との間に起こった事をポツリポツリと話していった。
「その、実は…………」
クリスは全てを話した。バルベルデで任務に就いた時の事。その任務の最中、親しくしていた女性と再会した事。
そして、透の喉の仇である男を見つけ、衝動的に憎悪に駆られてそいつを殺そうとしてしまった事。
その部分に差し掛かり、クリスの凶行を聞いた航は思わず腰を浮かせた。
「クリスちゃん、君は……!」
「違うッ! アタシは、そいつを殺してない。いや、殺せなかった。透が、そいつを守ったから……」
ここからが問題の部分。透はあろうことか憎むべき相手を助けようとクリスを止めに入ったのだ。その理由が分からずクリスは暴れ、結果透は彼女を止める為とは言え彼女に手を上げてしまった。そしてそれが切っ掛けとなり、クリスは透の考えが分からなくなり今の今まで距離を取ってしまっている。
それらを一通り聞き終え、航は冷めた紅茶を飲み干すと大きく息を吐いた。
「はぁ〜……。一先ず、クリスちゃんが人殺しにならずに済んで、ホッとしているよ」
「すんません。あの時はもう、怒りで頭の中が真っ白になっちまってて……」
「いや、気持ちは分かる。恐らく私が君の立場でも、きっと同じように殺そうとした事だろう」
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