第百二十一話 毎日見たいのでその九
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「逃げてな」
「その災難をやり過ごすことですね」
「いつも逃げてもよくないさ」
そうしたことをすることはというのだ。
「けれどな」
「それでもですか」
「どうしようもない時はな」
「逃げてですか」
「自分を護ることも大事なんだよ」
「逃げていいんですね」
「逃げるにも勇気がいるさ」
マスターはこうも言った。
「一つの決断だからな」
「決断には勇気がいるんですね」
「今の時点でどうしようもない事態や相手と向かってどうなるんだ」
「潰されるだけですか」
「試しにDV旦那から逃げるなって言ってな」
暴力を振るう相手からというのだ。
「その奥さん大怪我したり殺されたらどうするんだ」
「言った人の責任になりますね」
「鬱になったり自殺してもな」
暴力は受けた相手の身体だけでなく心も傷付ける、だから問題であるのだ。これは家庭だけにあるものでもないことが深刻なことなのだ。
「逃げるなって言った相手が責任取るか」
「そうしたこと言う人って責任取らないですよね」
咲もこのことはわかって応えた。
「やっぱり」
「取るものか。自分の頃はどうだったとか言ってな」
「逃げるなって言って」
「最悪の事態になってもな」
それでもというのだ。
「ああだこうだ言い訳してな」
「責任取らないですね」
「試しに自分が受けてみろ」
その暴力をというのだ。
「わかるさ、暴力だのは甘く見ないことだ」
「人を徹底的に傷付けますね」
「そうするんだよ、それにな」
マスターはさらに話した。
「自分の若いころ子供の頃のことなんてな」
「どうでもいいですね」
「今なんだよ」
問題はというのだ。
「実際に傷付いてる人がいてな」
「そんなこと言ってたら」
「最悪の事態にもなるんだよ」
殺されたり自殺したりすることがというのだ。
「下手したらな」
「そしてそんな時にですね」
「逃げるな、我慢しろとかな」
「言ってる人こそですね」
「逃げるからな」
「無責任に言っているだけですね」
「相手にするな」
強い声で否定した。
「その人のことなんて見ていないからな」
「ただ自分のことを言っているだけですね」
「そうさ、その人の過去なんてどうでもいいんだよ」
「それよりもですね」
「被害を受けている人のことだよ」
問題はというのだ。
「その人がな」
「大事ですね」
「そうだよ、だからな」
「そんなこと言う人のことはですね」
「無視してな」
そうしてというのだ。
「そのうえでな」
「その人にどう無事であってもらうか」
「そのことがな」
まさにというのだ。
「大事なんだよ」
「そうですよね」
「それでな」
さらに言うのだった。
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