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イベリス
第百二十一話 毎日見たいのでその六

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「浮気された方がまともならな」
「浮気した方が悪いですね」
「そうしたことを知らないで言うなんてな」
 それこそというのだ。
「知ってて言ってるなら尚更だがな」
「人間の屑ですか」
「いるだろ、テレビに出てる奴で」
 咲に嫌そうな顔で話した。
「ガチャ目で頭剃ったな」
「築地の人ですね」
「ああ、巨人ばかり好きなな」
「あの人ですね、酷いですよね」
 咲もその輩が誰かわかって答えた、見れば咲にしても今の顔は実に嫌そうなものであった。その顔でマスターに言うのだった。
「本当に」
「あいつは倫理観がないんだ」
「そうとしか思えないですね」
「だからな」
 それでというのだ。
「あんな奴は問題外だ、浮気はな」
「悪いですよね」
「ああ、けれど本当にダニみたいな奴と間違って付き合ったら」
 その時はというのだ。
「何かないうちにな」
「別れることですね」
「そうするんだ、最低な奴もいるんだ」
 世の中にはというのだ。
「だからな」
「そんな人とは別れて」
「告白されてもな」
 別の誰かにというのだ。
「それが屑と別れるきっかけならな」
「いいですか」
「ああ」
 そうだというのだ。
「その場合はな。けれどな」
「普通はですね」
「相手がいたらな」
 その場合はというのだ。
「告白しないことだよ」
「そうですね」
「相手がいないか確かめて」
 そうしてというのだ。
「告白しなよ」
「そうします」
 咲は強い声で答えた。
「私も」
「あの人はいい人で真面目だしな」
「お相手がいたら」
「裏切らないさ、それで嬢ちゃんもな」
「裏切らないことですね」
「ああ、それで相手がいたらな」
 近藤にというのだ。
「本当にな」
「諦めることですね」
「ああ」
 そうだというのだ。
「いいよな、そのことは」
「そうします」
「その時は泣けばいいさ」
 マスターは優しい声で述べた。
「もうな」
「泣いたらですか」
「気が済むまで泣いて言葉にして吐き出してな」
 そうしてというのだ。
「そのうえで酒も飲んでな」
「お酒ですか」
「未成年でも飲んでるのがな」
「何ていうか」
「オフレコだけれどな」
 マスターはこう前置きして話した。
「結構皆飲んでるだろ」
「まあそれは」
「嬢ちゃんのことは聞かないさ」
 察しているがそれでもだった。
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