第一章
[2]次話
お婆さんと猫達
母の辻菊子のいる実家に帰ってだった、娘の小百合は眉を曇らせて言った。
「お母さん、このままだとよくないわ」
「そうかしら」
「ええ、今猫何匹いるのよ」
家の中にいる猫達を観て言うのだった、二人共穏やかな顔立ちだが母の髪の毛はすっかり白くなっていて背中も曲がってきている。
「二十匹よね」
「この前また増えて二十四匹よ」
「多過ぎるわよ」
「世話はしてるわよ」
母は娘に言った。
「ちゃんとね」
「今はね」
娘は厳しい声で答えた、服は二人共地味な部屋着である。
「出来てるわ、けれどお母さん一人でしょ」
「お父さんが亡くなって十年ね」
「もうすぐ八十よ」
娘は今度は母の年齢の話をした。
「身体も弱ってきてるし」
「この子達の世話もなの」
「出来なくなるわ、そうなったらね」
「この子達がどうなるか」
「だからね」
母にさらに言った。
「今のうちにね」
「何とかするの」
「保護団体に連絡して」
そうしてというのだ。
「里親さんをね」
「探すのね」
「そうしてもらいましょう」
「私が動けるうちに」
「そう、手を打って」
そうしてというのだ。
「皆がいい家族に迎えられる様にね」
「するのね」
「ボランティアで不妊や去勢もしてもらって」
そうした手術をというのだ。
「それでね」
「そのうえでなのね」
「皆幸せになってもらいましょう」
「幸せに」
「若しお母さんに何かあったら」
その時はというのだ。
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