第四十話 童話の中からその三
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「そやろ」
「ああ、大きさを見てもな」
「そやったな」
「熊が歳を取れば」
そうなればというのだ。
「時として妖怪に変じてな」
「鬼熊になるな」
「どんな生きものも歳を取れば」
そうなればというのだ。
「猫又とかな」
「妖怪になるな」
「妖力を備えてな」
そうしてというのだ。
「そうなる、そしてその力は」
「並の獣より強いな」
「鬼熊はにしろ民家の馬や牛を連れ去ってや」
「喰らうな」
「そこまで力が強くなる」
「日本の熊でそこまで強いのはな」
「ないわ」
中里は言い切った。
「少なくとも本州ではな」
「本州の熊はツキノワグマや」
芥川も言って来た。
「そんな牛や馬を連れ去る様な」
「大きさやないな」
「羆でもな」
北海道のこの熊でもというのだ。
「そうはな」
「出来んことやな」
「ああ、ただな」
芥川はこうも言った。
「羆も大きくなるとな」
「それ位出来そうなのおるな」
「馬でも道産子位やと」
小さなこの馬ならというのだ。
「連れ去れるかもな」
「あの馬やとか」
「ああ、特にな」
芥川は中里に険しい顔になって話した。
「三毛別のな」
「羆嵐か」
「あの事件の羆やとな」
「相当大きかったらしいしな、あの羆」
「それに狂暴化しとったしな」
あまりにも身体が大きく冬眠の寝床が見付からず冬眠し損ねてだ、性質がそうなってしまっていたのだ。
「そやからな」
「鬼熊とやな」
「大して変わらんかったかもな」
こう言うのだった。
「あそこまでなると」
「そうかも知れんな」
中里も否定しなかった。
「北海道から来た連中よお話すしな」
「あの羆の話な」
「あっちやと伝説やな」
「明治の頃のな」
開拓期の頃である。
「自然、羆の怖さを語る」
「それやな」
「そうした話は何処でもあるで」
シェリルはこう話した。
「世界のな」
「獣害はやな」
「熊に限らずな」
「ライオンでも虎でも豹でもやな」
「そや、ただな」
シェリルは眉を曇らせて話した。
「ユゴーが自分の国のことやからよお話す」
「あれやな」
リーが鋭い目になり応えた。
「ジェヴォダンの野獣やな」
「あれは狼と言われたけどな」
「絶対にちゃう」
リーは断言した、そしてそれがどうしてなのかをシェリルに対して根拠を出してそのうえで話した。
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