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首輪にあった手紙
第二章

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「見付からないな」
「そうですね」
「ふざけた奴だ」
「ええ、捨てられる立場を理解しろですよ」
「全くだ、ただあの娘はいい家族に迎えられてな」
 ローラのこともわした。
「このことはな」
「よかったですね」
「全くだ」
 こう言うのだった。
「悪人は見付からないがな」
「犬は救われた」
「そのことはよかったな」
「ですね、本当に」
 トマーソンも頷いた、犬の幸せは素直に祝った。
 ブリーデンは休暇の時にイギリスに旅行に行った、サウスヨークシャー州を巡っていたが街中で雄のふさふさとした黒い毛で目のあたりには毛がない小さな雄犬を見た、そしてついつい笑顔で言った。
「可愛い子だな」
「テッサっていうのよ」
 犬のリードを持っている白髪の老婆が答えた。
「家族に迎えたの、十二歳よ」
「迎えた?」
「ええ、実はこの子芝生に捨てられていて」
 老婆はブリーデンに怒った顔で話した。
「お手紙が傍にあって」
「そこに名前書かれて引き取ってくれってか」
「そうなの、お隣さんがカナダに引っ越すから預かったけれど」 
 手紙にはそう書かれていたというのだ。
「自分はその気がないから」
「手紙を添えて捨てたんだな」
「そうなのよ」
「そうした話ならな」
 ブリーデンはここでローラのことを話した、すると老婆はとても嫌そうな顔になってこう言ったのだった。
「アメリカにもあるのね、そんなことが」
「そうだな、悪い奴は何処でもいるな」
「幸いこっちは捨てた人も前の飼い主も身元がわかって」
「責任問われたか」
「ええ、けれどね」
 老婆は悲しい顔になってテッサを見てブリーデンに話した。
「テッサやその娘みたいなことはね」
「起こって欲しくないな」
「全くよ、じゃあこれで」
「機会があったらまたな」
「会いましょう」
「ワン」
 老婆だけでなくテッサも鳴いてブリーデンに挨拶した、彼はその挨拶を受けて別れてだった。一人で本当にこんなことはあって欲しくないと思った。


首輪にあった手紙   完


                  2023・10・18
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