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第三十九話 幼少その九

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「わし等だって救命胴衣着て何人かでして出来る限り水に入らないんだぞ!」
 男の人は青年に叫んだ。
「危ないからな!」
「そんなこと言っても!」
「待ってろ、今助けるぞ!」
 釣り人達はすぐに動こうとした、だが。
「犬鬼!」
「ワン!」
 犬鬼は護刃に頷いて応えてだった。
 すぐに橋から飛び降りて川の中に入ってだった。
 泳いで青年を救出した、そのうえで青年は救助されたが。
 その場面を見た悪ガキ達も女の子達も釣り人達もいぶかしんだ。
「おい、何かな」
「おかしいよな」
「あの人誰かに助けられたみたいだけれど」
「誰かしら」
「何だ今のは」
「誰が助けたんだ?」
「一体」
 誰もが首を傾げさせた、そしてだった。
 護刃達が帰るともう夜で子供が夜まで何処に行っていたんだと大目玉を喰らった、だがこの時にだ。
 悪ガキ達が滝のことを言ったが担任の先生はその話を聞いて驚いた。
「あの滝は本当にあるのか!?」
「はい、あります」
 護刃が答えた、それも即座に。
「私行ってますから、いつも」
「まさか、あの滝は仙人の滝といって」
「仙人さんですか」
「とても人が行けないところにあるというんだ」
「そうなんですか」
「そんなところに行くなんて」 
 とても信じられないという顔で言うのだった。
「とても」
「信じられないですか」
「まさか君が」
「どうなのかしら」
「護刃ちゃん嘘言わないけれど」
 ここでまた女の子達が話した。
「仙人の滝って」
「そんなところどうして行くの?」
「だから崖を跳んでね」
 護刃は正直に答えた。
「それでよ」
「そういえば護刃運動神経いいよな」
「凄くな」
 また悪ガキ達が言った。
「それでか?」
「体育いつも五だしな」
「何か凄いな」
「そうだよな」
「あとね、聞いたけれど」
 先生は護刃にあらためて言った。
「溺れていた人が助かったそうだけれど」
「はい、犬鬼が助けたんです」
 ここでもだ、護刃は正直に答えた。
「あの人を」
「しかし誰も犬はね」
「見てないんですか?」
「何かが助けたそうだけれど」
 それでもというのだ。
「見ていないってね」
「そう、ですか」
「君はよくその犬のことを言うけれど」
 犬鬼のことをとだ、先生はいぶかしみつつ言った。
「まさか」
「こいつの家の神社の神様か?」
「まさかな」
 悪ガキ達はまた言った。
「いつも話してるけれどな」
「本当にいるのか?」
 だがその場にいた者は誰も犬鬼は見えなかった、結局彼等は護刃の言葉をまさかと思うだけで確信は持てなかった。
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