第三十九話 幼少その七
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「そして暮らしなさい、どうかな」
「そうしていいの?」
「いいよ。神は全てを救われるのだから」
礼拝堂の十字架を見て言った。
「だからね」
「それじゃあ」
火煉も頷いた、こうして教会に入りそこで育ちシスターとなったのだった。やがて神父の養子にもなった。
護刃はこの時祖母に言っていた。
「ねえ、どうして犬鬼が皆には見えないの?」
「そのことかい」
「私やお祖母ちゃんには見えるのに」
幼い彼女は犬鬼を見つつ家で祖母に問うた。
「どうしてなの?」
「仕方ないよ」
これが祖母の返事だった。
「そのことは」
「仕方ない?」
「力がないからね」
それ故にというのだ。
「どうしようもないんだよ」
「力がないと見えないの?」
「犬鬼はね、そこにいてもね」
このことは確かでもというのだ。
「力がないとね」
「見えないの」
「それで他のものもだよ」
祖母は護刃に達観した様に言った。
「力がないとね」
「見えないの」
「行けないしね、そうした力がね」
「そんな、犬鬼が見えないなんて」
「そんなこともあるんだよ」
こう言うのだった、そしてだった。
厳格な感じだがそこに規律正しさも見せる祖母と話した暫く後で護刃はクラスの男の子悪ガキ二人に言われた。
「護刃お前滝があるって言ってたよな」
「渓谷の吊り橋の先に」
「そんなのあるのかよ」
「嘘だろ」
「嘘じゃないよ」
護刃は強い声で答えた。
「あるから」
「本当かよ」
「じゃあ案内しろよ」
「うん、じゃあ今度の日曜日にね」
こう約束してだった。
護刃は悪ガキ達をその滝に案内することにした、この時二人の女の子のクラスメイト達も一緒で五人で行った。
その途中道が長くてだった。悪ガキ達はたまったものではないという顔で不平を言い出した。
「吊り橋だって遠いんだぞ」
「かなり深い場所にあるんだぞ」
「その先に何があるんだよ」
「本当に滝があるのかよ」
「あるから」
護刃の言葉は変わらなかった。
「絶対に」
「だからかよ」
「そこまで連れて行ってくれるのかよ」
「こっちよ」
自分達が今いる道の先を指差して言った。
「滝があるから」
「滝あるのかしら」
「どうかしら」
一緒にいる女の子達も懐疑的だった。
「護刃ちゃんそう言うけれど」
「どうかしら」
「あるよ、吊り橋を越えてね」
そうしてとだ、護刃は女の子達にも答えた。
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