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第三十九話 幼少その二

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「兎角才はです」
「あるのう」
「はい、空汰は」
 白い長い髭を濃く生やしそれが胸まで続いている僧正に話した。
「素晴らしいです」
「弘法大師様にも匹敵するまでの」
「そこまでの力をです」
「やがて発揮するのう」
「天の龍の一人に相応しく」
「わしもそう思う。空汰は日に日に凄くなっておる」
 僧正は目を細めさせて述べた。
「その時が来る頃にはな」
「もうですね」
「大師様に匹敵するまでにな」
「法力を備えられます、ですが」
「しかしじゃな」
「不真面目な部分が多く」
 その行いにというのだ。
「悪戯特にです」
「盗み食いじゃな」
「それが多く」
 それでというのだ。
「困ったものです」
「子供にしてもな」
「そういったことが問題です」
 どうにもというのだった。
「全く以て」
「ほっほっほ、悍馬は即ち名馬というしのう」
「多少の悪戯はですか」
「まあよいとしてな」
 そうしてというのだ。
「育てていこう」
「そうすべきですか」
「それに気質はよいな」
「はい、人として持っているべきものは全て持っています」
 僧侶もそれは確かだと答えた。
「温和で人の心を察し」
「意地が悪くもなくな」
「腹は奇麗です」
「ならよい、まあ悪戯が過ぎればな」
「僧正がですか」
「叱る。だから多少のことはな」
 悪戯をしてもというのだ。
「大目にな」
「見ることですか」
「食べることについてもな」
「そちらは実にです」
 空汰の食欲のことも話した。
「旺盛でして」
「よく食べるのう」
「三食完食してです」
 残さずというのだ。
「そしてです」
「さらにじゃな」
「二度のおやつもです」 
 十時と三時のそれ等もというのだ。
「普通にです」
「食べるのう」
「しかしです」
 そこまで食べてもというのだ。
「盗み食いまでして」
「そのことがじゃな」
「困ったものです」
 こう言うのだった。
「まことに」
「まあ過ぎたらな」
「その時はですか」
「わしから言っておく」
 僧正は僧侶に穏やかな声で話した。
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