暁 〜小説投稿サイト〜
魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第174話:理不尽の権化
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まない思いを感じずにはいられなかった。

 沈んだ顔をする響に、奏が頭からタオルを掛け髪を拭いて乾かしてやった。

「わぷぷっ! か、奏さん?」
「そうしょげた顔をするなって。大丈夫さ、颯人だってあの人をただ一方的にぶちのめす事だけを考えてる訳じゃないからさ」
「ぁ、はい……!」

 汚れを落とした奏達がシャワー室から出ると、そこでは一足先に汚れを落とし終えていた男性陣が待っていた。颯人達は奏達が出てくると、軽く手を上げて彼女達に並んだ。

「おぅ、すっかり綺麗になったな?」
「惚れ直したか?」
「何時だって」
「そう言う事は家でやれッ!」

 自然に惚気る颯人と奏に、クリスが思わず声を上げる。が、他の者達も大なり小なり何かを言いたげな様子で顔を赤くしたり視線を逸らしていた。
 彼女らの反応を一頻り楽しみ、颯人達はシャワー室から移動を開始する。

 その道中、響はクリスと透を交互に見る。相変わらず、2人の間には目には見えない壁が存在していた。現に今も、2人は距離を離して歩いている。
 流石に見ていられなくなり、響はクリスに声を掛けようとした。

「あの、クリスちゃ――」
「響、し〜ッ」

 クリスの肩に手を掛け話し掛けようとした響だったが、奏がそれを制した。奏は響の手を優しく下ろさせ、そして口元に人差し指を当て口を噤ませる。
 響と同じくクリスの事を心配していた翼は、何故奏が響を制するのか分からず小声で問い掛けた。

「何で立花を止めるの? 流石にそろそろ、こちらから動いた方が……」
「気持ちは分かる。でも、今はそっとしておいてやってくれ。クリスも漸く、自分から透に向き合えそうなんだ」

 今まで、透の事が分からなくなり距離を置いていたクリス。だが彼女は、透の父である航を橋渡しにして本当の透と向き合う覚悟を決めつつあった。その覚悟を、今外野が突いて鈍らせる訳にはいかない。

 一方透の方も、目を背けていた自分と向き合う覚悟が出来そうな所であった。自分とクリスに関わりのある、ある一組の姉弟を繋ぎにして。

 そんな事を話しながら歩いていると、談話スペースの前を通りかかる。そこには普段ここにはあまり足を運ばない弦十郎がソファーに腰掛け、颯人達の姿を見ると待っていたと声を上げた。

「うむ、揃っているようだな」
「師匠? 何ですか、藪から棒に?」

 まるで颯人達を待ち受けていた様な弦十郎の佇まい。これまでに数々の悪戯などを経験してきた颯人と奏は、そのある意味で百戦錬磨の経験値から何かを感じ取った。2人は素早く目配せすると、一目散にその場から逃げ出そうとした。

「じゃ、俺らは先に――」

 適当な理由を付けてその場から離れようとした2人だったが、颯人と奏が逃げるのを雰囲気で察し
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