第一章:染み渡る血
1-1:犯人の血は腐っている
眠りから覚めた私はスッと起き上がり 辺りを見回す。
状況把握は2秒で済ませ、腰の刀に手を掛ける。
さて、今日も目覚めの血戦と行こうか――。
質素な食卓を挟むのは 私と弟子の「都月?」だった。
「…で、今日も朝から頑張っていたと、…そういうことですか?」
呆れた様子でため息をつく?であったが、彼女も彼女で朝から「狩り」に行っていたことが伺える。
私が 腕の包帯を凝視しているのに気づいたのか、?はさらに大きなため息をつく。
「…気づきました…? これ、噛まれたんですよね、女の子に」
「…えぇ?」
私が首をかしげると、?はこれまた大きなため息をつき、巻かれた包帯を取り始めた。
「…一応聞くけど、?、平気なのよね…?」
恐る恐る尋ねると、?は私をジロリと見て言った。
「…重傷だったら寝てます」
軽い怪我――というのは、多分嘘だ。
?の性格はよく知っている。
もちろん自分を卑下しているところも。
「ほら、このくらいですよ」
「ゲッ!!」
思わず声が出るくらい、「それ」は酷かった。
?の左手首に付いた「歯型」は普通のそれではなかった。
腐ったような赤褐色が弟子の腕を侵食していたのだ。
「 ………… 」
私は目の色を変えて歯型を見つめていたが、?の不服そうな顔を見て そっと口を開く。
「…?、これ、軽傷…?」
「はい、軽傷です。これくらいで泣きべそ かくなんて信じられません」
…泣きべそかいてたんだな。
噛まれた瞬間は泣き出すほど痛かったらしい。
今は痛みは治まっているようだが、このまま放って置くわけにもいかない。
とりあえず噛んだ相手のことを聞こうか――。
「…?……いや、なんでもない」
と、思ったが、やはり彼女の性格上、ここは黙って連れて行くとしよう。
目星はだいたい付いている。
きっと、「あれ」だろう。
「行こっか」
「……」
微かにうなづいた?を連れて、朝食もそのままで外に出た。
戸を閉めて少しだけ息をつき、さぁ向かおうかと思った、その時。
「おっはー、ひっさびさーっ!」
「犯人」が訪ねてきた。
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