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第九十九話 寝られるだけでもその四

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「それだけで違うわね」
「うちの実家お寺だけれど」
 黒髪を短くしているクラスメイトが言ってきた。
「禅宗のね」
「ああ、あんたそうだったわね」
 理虹もクラスメイトに応えた」
「臨済宗だった?」
「そうよ、禅宗だとあまり寝ないのもね」
「修行のうちなの」
「欲を抑えて」
 そうしてというのだ。
「煩悩を捨て去ってね」
「悟るのね」
「それに至ることが目的だから」
 禅宗の修行はというのだ。
「だからね」
「寝ることもなの」
「他の欲も抑えることが修行の一環だから」
 それでというのだ。
「それでね」
「寝なかったのね」
「修行によってはね」
 こう前置きして理虹に話した。
「十一時に寝て二時半に起きる」
「真夜中じゃない」
「修行中は三時半でね」
「四時間半しか寝てないのね」
「それで座禅組んでお経唱えて」
 そうしてというのだ。
「托鉢して自給自足の生活よ」
「大変ね」
「寝られないことがでしょ」
「修行はね」
 理虹はこれはと答えた。
「お坊さんならね」
「当然ってことね」
「そうよね」
「お坊さんは修行しないとね」
 まさにとだ、このクラスメイトも答えた。
「駄目よ」
「そうよね、私もそう思うから」
 だからだというのだ。
「そこはね」
「いいのね」
「だから問題はね」
「あまり寝ないことね」
「二時半はないでしょ」
 この時間に起きることはというのだ。
「三時間半しか寝てないし」
「だから修行中はね」
「それでずっと修行してるのね」
「そうなのよ」
 これがというのだ。
「物凄いことにね」
「いや、私だったら絶対に無理ね」
 理虹は自分で確信して言った。
「そんな修行は」
「寝ないと駄目ってことね」
「せめて六時間位寝ないと」
 さもないと、というのだ。
「元気出ないわ」
「そのうち身体が慣れるそうよ」
「あまり寝なくても」
「そうみたいよ」
「いや、慣れる以前にね」
 どうかとだ、理虹はクラスメイトに言った。
「身体に悪いし」
「寝ないと」
「漫画家でも寝てるとね」 
 そうしている人はというのだ。
「長生きするらしいし」
「逆に寝ない人はなのね」
「やっぱりね」 
 どうしてもというのだ。
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