第九十九話 寝られるだけでもその二
[8]前話 [2]次話
「それだけで幸せなんだ」
「そうなのね」
「充実して過ごしてな」
日々をというのだ。
「それでな」
「よく寝られたら」
「それでな」
「幸せなのね」
「ああ」
本当にというのだ。
「そうなんだぞ」
「まあね、ヒトラーもスターリンもね」
理虹は彼等のことを話した。
「権力は持ってたけれど幸せだったか」
「そう見えるか」
「見えないわ」
彼等の人生を見ると、というのだ。
「本当にね」
「そうだな」
「暗殺とか粛清とか戦争とか」
「権力闘争もあっただろ」
「そんな人生だったからね」
「幸せじゃないな」
「二人共忙して充分に寝られなくて」
そしてというのだ。
「寝る間も襲われるかも知れないし」
「そう思うとな」
「安心して寝られるないわね」
「そうだからな」
それでというのだ。
「独裁者になってもな」
「いいことはないのね」
「天寿を全うしてもな」
それでもというのだ。
「後でボロクソ言われるもんだ」
「それが独裁者ね」
「そうだ」
こう言うのだった。
「本当にな」
「いいこと言われないのね」
「いいことをしたら言われないけれどな」
独裁者でもというのだ。
「そんな人は少ないな」
「そういえばね」
妹が言ってきた。
「トルコのケマル=アタチュルクさんは」
「独裁者だったのよね」
理虹がまさにと応えた。
「あの人って」
「そうなのよね」
「それで」
そのうえでというのだ。
「トルコを近代化したから」
「今も好かれてるのよね」
「偉大だったって」
第一次世界大戦に敗れ事実上欧州各国の植民地に堕ちてしまっていたトルコを救いそこからこの国を発展させたのだ。
「言われてるわね」
「学校のトルコの子も言ってるし」
「それを見たらね」
「独裁者でもいいことをしたら」
「ちゃんと褒めてもらえるわね」
「後々でもね」
「そんな人もいるけれどな」
父は娘達に話した。
「大抵の独裁者はな」
「そうしたことするのよね」
「謀略に暗殺に粛清」
「強制労働もよね」
「無茶の極みばかりね」
「させてな」
そうしてというのだ。
「寝ることもな」
「出来ないのね」
「とても」
「今話している通りにな」
まさにという言葉だった。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ