第1章 守らなければならないものがある
2話「襲撃」
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色が、彼の人間離れした容貌をさらに際立たせている。
「襲撃だ」
短く伝えられた指示。直後に、脱走防止としてつけられていた首の枷が外れる。
自由になった私はすぐに立ち上がって、彼の横を走り抜ける。
……ああ、やっと、やっと戦える。役目を果たせる。
意識を集中させて"あちらの世界"を視、そして自分の足を最大限強化するようにイメージをする。元から自分の体に備えられた魔力と、現実世界の建物内に漂う魔力、そして"あちらの世界"に溢れかえっている魔力を、一時的に全て足へ。早く、私の助けを必要としている場所へ駆けつけたい。一つでも多くの命を、私が助けたい。そう思って、どんどんイメージを練り上げていく。
そして、そのイメージを現実世界にて"顕現"させる。ただ走っていた足を、一歩、思い切り地面を踏み締めて、練り上げたイメージを込めて____破裂させる!
「____わ、っ」
速い! やりすぎな程に速い、バカ!
一歩にかなりの勢いとスピードがつき、まるで銃弾のように廊下を駆け抜ける。曲がり角をきちんと曲がりきれるか不安になるが、これはこれで爽快感もあって楽しい。
これが、"魔法"。
先程私を迎えに来た男、マキが見つけた、無力な人間が、ありふれた理不尽へ対抗するための手段。
走るというより、滑空と再び勢いをつけるために地面を蹴るという動作を繰り返して三分も経たないうちに、戦いが起こっている地点に到達する。
そこには、味方同士のはずの戦闘員が争っているという奇妙な光景が広がっていた。
魔法は見た感じ戦闘員たちが小競り合いをする以外で使用された痕跡はない。何かよくない香が炊かれているような感じもしない。もしかしたら他に原因はあるかもしれないが、今一番疑うべきは____
そう思ったところで、ピタリと戦闘員たちの動きが止まる。そしてグリンと頭が動き、全員の目線が私に集まる。
その奥から、ローブをまとい顔を隠した男がゆっくりと姿を表し、高らかに宣言した。
「アッハッハ! 新しい子が来たみたいだねぇ」
「……!」
「でも無駄だよ。『みんな死ぬ』んだから!」
その瞬間、戦闘員たちは一斉に腰のあたりから、配給されたナイフを取り出し、自らの首筋を掻き切ってしまった。血が勢いよく噴き出し、全員がバタンと倒れた。
マキが魔法を研究するきっかけにもなった、"ありふれた理不尽"の一つ。それがこの、"異能"の力だ。
人間のうち、選ばれた者だけが異能の力に覚醒する。それは魔法と違い、条件さえ満たせば自身に備わった異能力を自由に発動することができる。
その力を良いことに利用する者もいれば、こうやって殺人に利用する者もいる。過去にも何度も何度も異能による大量殺戮が行われてきた。
「
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