第三十八話 場所その十八
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「本当にな」
「だからですか」
「ここを出られるならな」
それが一時的でもというのだ。
「どうだ」
「それが出来ましたら」
丁はこの言葉を心から出した。
「お願いしたいです」
「したい、か」
「わらわはここにいてです」
「夢見をしてか」
「いざという時に身代になる為に生まれてです」
そうしてというのだ。
「ここにいるのですから」
「離れられないですか」
「何があろうとも。その宿命、運命をです」
これをというのだ。
「受け入れています、いえ」
「受け入れるしかないか」
「そうですので」
だからだというのだ。
「お心だけです」
「受けるか」
「そうさせて頂きます」
こう言うのだった。
「有り難く」
「そうか、だが俺はだ」
そう言う丁を見据えて言うのだった。
「この気持ちに偽りはない、だからな」
「それゆえに」
「今も同じだ、あんたが少しの間でも今の役目そして場所から離れられてだ」
「わらわが望むなら」
「それが出来る様にだ」
「動いてくれますか」
「そうしていく」
このことを約束するのだった。
「必ずな」
「そやな、おひいさんだけが背負うことはないわ」
空汰は微笑み神威のその言葉に頷いた。
「それに羽根を伸ばすことも必要や」
「そうですよね、私なんていつも羽根を伸ばしてますよ」
護刃は笑って話した。
「甘いものも食べて」
「だからですか」
「姫様も」
「何だったら」
嵐はここでこう言った。
「甘いものやお酒を」
「持って来てくれますか」
「そうするけれど」
「いえ、それはです」
丁は嵐のその申し出にこう返した。
「わらは五感がないので」
「舌もなの」
「喋ることは出来ず」
そしてというのだ。
「味もです」
「わからないのね」
「はい」
そうだというのだ。
「ですから」
「そうだったわね」
「そやな、姫様は」
嵐だけでなく空汰も難しい顔で応えた。
「そうしたお身体やった」
「ええ、ただ見えず聞こえないだけでなかったわ」
「そのこともあったんや」
「ですから」
丁はまた話した。
「お気持ちだけ頂きます」
「辛いですね、ですが」
それでもとだ、退院したばかりでまだ本来の体力ではなくこれまで言葉を出さなかった昴流が言ってきた。
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