第百十九話 秋という季節その十一
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「中身なんてね」
「ないですか」
「何かありそうで」
その実はというのだ。
「ないよ、太宰治なんてわかりやすいよね」
「そうですね」
咲も彼の文章を思い出して頷いた。
「あの人は」
「だから太宰が何を言いたいのかね」
「わかりやすいですね」
「だからいいんだよ、けれどね」
「それがですね」
「わからない文章だと」
それならというのだ。
「何なのか、まず誰にでもわかる」
「そうした文章でこそですね」
「いいから」
「そうでない文章は」
「最初からね」
それこそというのだ。
「読まなくていいよ」
「そうですか」
「それぞれの分野の専門用語はね」
これはというと。
「理解する必要があるけれど」
「それでもですか」
「やたら変な造語や小難しい文章ばかりなら」
それならというのだ。
「別にね」
「読まなくていいですか」
「哲学はわかりにくいものかな」
咲に問う様にして言った。
「果たして」
「そうでなくて」
「真理はいつも単純明快だっていうしね」
そうしたものだからだというのだ。
「そんなね」
「難しいものじゃないですか」
「その筈だよ」
こう言うのだった。
「もうね」
「そうですか」
「だからね」
それでというのだ。
「そんな小難しい読んでわからない様な」
「哲学書はですね」
「読まなくていいよ」
「そうですか」
「難しい本を読むイコール頭がいいか」
部長はこうも言った。
「それはね」
「また違いますね」
「そうした本を書いてもね」
「頭がいいとは限らないですね」
「そうだよ、本当の意味で頭がいいのは」
それはというと。
「もうね」
「わかりやすい文章を書くことですか」
「それでそこに書かれていることをちゃんと理解する」
「それが頭がいいことですね」
「小難しい文章読んで理解出来た僕凄いそしてこんな文章書く人凄いってなったら」
そうなると、というのだ。
「錯覚でね」
「そうした考えに至ると」
「また違うよ」
「本当に正しいのはですね」
「そう、わかりやすいことがね」
「そして正しく理解することがですね」
「大事だよ」
こう咲に話すのだった。
「僕はそう思うよ」
「そうですか」
「それで変な哲学書読むより」
このこともまた言うのだった。
「漫画とかライトノベルを読んだ方がね」
「いいですね」
「ずっとね」
「そういうものですね」
「そうだと思うよ」
咲に穏やかな声で話して咲も頷いた、二学期がはじまって咲は部活でこうしたことも知ってまた成長したのだった。
第百十九話 完
2023・7・15
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