第3部
ジパング
ヒミコの屋敷
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「ふむ、オロチに捧げる前に、まずは身体を清めなくてはならぬ。そこの侍女に付き従い、湯殿で服を脱ぎ全身の汚れを洗い流すのじゃ」
「え!?」
服を脱ぐ!? そんなことしたら、ユウリが男だってバレてしまう!!
「あ、あの、えーと、姉は極度の恥ずかしがり屋でして、私以外の人に裸を見られるのは嫌なんです。なので場所を案内してくださればあとはこちらでやります!!」
私の切羽詰まった様子に、侍女どころかヒミコ様まで圧倒されたようだった。
「……わ、わかった。ではそこの、案内してやれ」
「はい。かしこまりました」
拍子抜けするくらいあっさりと了承してくれた。ものは言いようである。
そして私たちは侍女に案内され、湯殿――後で知ったがお風呂のことらしい――へと無事たどり着くことが出来たのだった。
「はあ、緊張したぁ……」
ヒミコ様の部屋にいた侍女と別れたあと、私とユウリは脱衣室らしき小部屋に入った。その奥にある扉が、お風呂への入り口だろう。
私は肩の荷を下ろすかのように盛大に息を吐いた。すると呆れたようにユウリが言った。
「随分と大袈裟だな。……けど、お前にしてはよくやった」
「ホント? ありがと」
珍しくユウリに褒められ、柄にもなく照れる私。そしてこの場所が本来服を脱ぐ場所だと言うことに改めて気づき、さらに恥ずかしくなった。
「あっ、じゃあ、入り口で待ってるから」
そそくさと出ていこうとすると、ユウリに手を掴まれ引き留められた。そして至近距離まで顔が近づくと、警戒するように周囲を見回した。
「念のため、この周辺を見張っててくれ。俺も周りに人がいないか気配を探るつもりでいる」
「わ、わかった」
蝶番の壊れたドアのようにこくこくと首を振る私。周囲に話を聞かれないようにしているのだとわかっていても、こんな完璧な美人の顔が間近にいるだけで、恥ずかしくて心臓が持たない。
半ば逃れるように私はユウリから離れると、急いで脱衣室から出た。
「あのー、どうしましたか?」
「?!」
いつの間にいたのか、先ほど案内してくれた侍女がそこに立っていた。一体いつからいたんだろう?
「顔が真っ赤ですけど……、もしかして湯殿で逆上せました?」
「はっ、はい! そうなんです! ちょっとめまいがして……。でも姉の方は大丈夫です!」
「そうですか。では、何かありましたら遠慮なく仰ってください」
そう言ってお辞儀をすると、侍女は去っていった。はぁ、この屋敷にいる以上、油断は禁物だ。
その後私は脱衣室の前で再び侍女が来ないか、もしくは他の人が近づいてこないかそれとなく見張っていた。流石に反対側の湯殿の方までは気を回すことは出来なかったが、ユウリがいるから大丈夫だろう。
しばらくして、ユウリが扉をノックする音が聞こえた。
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