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魔法絶唱シンフォギア・ウィザード 〜歌と魔法が起こす奇跡〜
AXZ編
第172話:愚者は悪名に非ず
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その物質、どこぞのバカの中から出たってんだから、さしずめ愚者の石ってところだな?」
徐にクリスがそんな事を口走った。確かにこの物質には正式な名前が無いので何かしらの名称を付けないと不便だし、目的が賢者の石の力の相殺なのだから賢者に対する名称として愚者を用いるのは不思議ではない。
ただ流石の響も愚者扱いに対しては思うところがあるのか、クリスに対して静かに抗議した。
「愚者とは酷いよクリスちゃん」
「そうだぞ〜、クリス。響はなぁ……」
「愚者ってのは語りたがるもんだ。だから響ちゃんには合わないよ」
愚者扱いは少し可哀想だったのか、奏と颯人がフォローする。が、そのフォローすら無駄にするのが響と言う少女の少し残念な所であった。
「そうだよ、クリスちゃん! 私に語れる事なんて無いんだから!」
「おいおい……」
「折角珍しく颯人がフォローしたのに」
「ほぇ?」
「立花? それだと自分は何も語れない馬鹿だと宣言しているようなものだぞ?」
颯人としては、『賢者は学びたがり愚者は語りたがる』という諺に
準
(
なぞら
)
えて響の事をフォローしたつもりだった。ところがよりにもよって響は自分に知識が無い事を吐露してしまい、結局は翼の言う通り己が馬鹿である事を大々的に宣言してしまったのである。颯人が思わず頭を抱える横で、翼の言葉の意味を理解した響は堪らず奏に泣きついた。
「奏さ〜ん! 皆が私をイジメる〜ッ!」
「あ〜、まぁ、今回はちと響も無防備すぎたな〜」
泣きついてくる響を奏が慰めるのを視界に収めながら、方針が固まった事に弦十郎が声を上げる。
「まぁ、何はともあれ名前は必要だ。響君には悪いが、賢者の石に対抗すると言う意味で愚者の石と名付けよう」
「うわ、まさかの師匠までッ!?」
まさかの裏切りに等しい宣言に更に響がショックを受ける。これ以上は流石に可哀想だと奏が颯人に何かアドバイスを貰おうと助けを求めた。
「えっと〜、え〜っと……は、颯人ッ! 何かないか?」
「え〜? ちょ、待って……」
何か響をフォローできる材料は無いかと脳内の引き出しを片っ端から開ける颯人。ところが響に対するフォローは意外な所から飛んできた。
「でも……愚者は悪い意味だけじゃない気がする」
「キャロル?」
その言葉を発したのはキャロル。彼女はこめかみを突きながら最近仕入れた知識をこの場で披露した。
「確か、タロットカードだと正位置で自由とか天真爛漫、可能性、それに天才の意味も持ってた筈。だから愚者ってだけでそんなに悪い意味は……」
「キャロルちゃんや? どこでそんな知識仕入れたん?」
「え? あ、アルドさんから……思い出すだけじゃなく、新しい知識を仕入れる事で開ける記憶もあるからって渡された
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