第九十八話 何でも読めることその四
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「検閲なくてもな」
「どういった表現や台詞が駄目か」
「あるからな」
「そうしたこと言う人いるの」
「いてクレームつけられてな」
そうしてというのだ。
「怒って筆折った小説家さんもだよ」
「いたの」
「一時だったけれどな」
それでもというのだ。
「言葉狩りとか規制とかにな」
「怒って」
「自分が言われてな」
それでというのだ。
「筆折ったんだよ」
「一時にしても」
「そんなこともあるからな」
「日本でもなのね」
「法律ではないけれどな」
「あれこれ言う人もいるのね」
「そうなんだよ」
これがというのだ。
「本当にな」
「そうなのね」
「けれどな」
それでもというのだった。
「やっぱり法律とか宗教でないってのはな」
「いいことよね」
「ああ、その漫画だってな」
「規制かかったら」
「どうなるか」
「まあこの作品について思うことは」
留奈は単行本を開いて両手に持ったまま言った。
「終わって欲しいってことね」
「最後まで描いて欲しいよな」
「作者さんに言いたいことはね」
「仕事しろだよな」
「そうね」
「まあ読者さん皆が思うことだな」
兄も否定しなかった。
「その漫画についてはな」
「そうよね」
「規制とかないしな」
「もう最後までね」
「ちゃんとな」
休載ばかりでなくというのだ。
「終わって欲しいな」
「絶対にね」
「まさかな」
兄は不吉そうな顔になって言った。
「終わらないとかな」
「いや、それはね」
妹は兄のその言葉と顔に慌てた風になって返した。
「ありそうだけれど」
「あって欲しくないな」
「絶対にね」
「そうだよな」
「折角読んでるんだし好きだし」
だからだというのだ。
「もうね」
「結末までな」
「描いて欲しいわ」
「そうだよな」
「この漫画に思うのはそのことよ」
「ああ、好きな作品を最後まで読めたら」
その結末までというのだ。
「そのこともな」
「いいことよね」
「幸せだよ」
「そこまで出来たら」
「ああ、その漫画だってな」
「冗談抜きで終わって欲しいわ」
「中にはあと少しだって終わりだったのに」
それがとだ、兄は残念そうに話した。
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