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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第二十六話 陪臣達の宴
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いうと傲然と益満大佐は豊久を大会堂の奥へとずるずると引っ張り込んでゆく。
「――――もうどうにでもなぁれ」
諦めきった下戸の生贄(しゅひん)は諦観の呟きを張り切った酒豪の背中にひっそりとぶつけた。



同日 午後第五刻 桜契社本部 大会堂
駒城家陪臣 馬堂家嫡男 馬堂豊久


 大会堂は喧騒に包まれていた。十数卓の円卓を占領している駒州産の分家・陪臣格の少壮有為の将校達が集まっているからだ。
「兵理研究会にこれ程の人数が集まるのは初めてでは無いでしょうか?」
「だろうな、俺もできるだけ出ているが、これほど集まったのは初めてだ。まさしく戦時体制だ」
隣に座っていた駒城家重臣の佐脇家の嫡男――佐脇俊兼が真面目な顔で首肯する。
 家の位階は同列だが、佐脇家はガチガチの武門で馬堂家はやや文門よりなので序列は佐脇家が上、だが家産は馬堂家が上。個人的には年齢は俊兼が二つ上で階級は豊久が二つ上とややこしい立場であるが、生真面目で裏表が出せない人柄であるので豊久は軍務の外では唯の良き先達として接している。
「厭なひびきですね、戦時って。それで集まれたのだと前向きに考えますか」
「――まぁそうするしかないな。将家の哀しいとこだ。
俺も一個小隊の部下が美奈津の海で見送って来たから気持ちは分かるよ」
佐脇俊兼大尉は、派遣された集成兵団に居た銃兵第九旅団で中隊長をしていた。
美奈津浜で撤退に成功した者の一人であり、であるからこそ豊久には素直に好意的であった。
似たような再会を喜ぶ同輩達が交わす雑談の切れ目を見計らい、陪臣格の筆頭でこの会の主催者である益満昌紀大佐が音頭をとる。
「それでは、我ら駒城家家臣団が俊英、馬堂豊久の生還を祝って!」
「「乾杯!!」」
皆が好き好きに飲み物を注いだ杯を呷り、そうそうに話のネタにされた約一名がむせこむ中で宴は始まった。
「酷い目にあった――」
まだけほけほとやっている後輩を見て笑いながら佐脇は笑う。
「まぁまぁ大目に見てやってくれ。あの育預が大隊を率いて帰ってきた時には君は死んだものだと思われていたからな。武勲も、奏上の機会もあの育預に――」
 喋りながら興奮しだした佐脇に豊久は肩を竦めていった。
「――早々に酒精が過ぎているようですね」
「あぁ、すまないな」
と決まり悪そうに佐脇も微笑した。
「おい!馬堂水軍中佐殿!此方に来い!」
割れた声が大会堂に響いた。
調度良いタイミングであるといそいそと豊久は立ち上がって笑う。
「おっと。頭に名誉をつけ忘れている奴がいますね。少し注意してこなくては」
「あぁ、それではまたいずれ」
そう言って佐脇も杯越しに手を振って見送った。

呼ばれた先は駒州出身の水軍の士官達が集まっている円卓であった。
尤も今は結構な人数が混ざり合って
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