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星々の世界に生まれて〜銀河英雄伝説異伝〜
敢闘編
第七十ニ話 戦いの後
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に近い物です。侯爵夫人が手を下す事は有り得ない」
「では…」
言いかけた俺を制すると、大尉は続けた。
「ここでグレーザーという医師が登場します。半年程前から侯爵夫人の元に付けられた宮廷医です。手紙は彼の手による物です。グレーザーは侯爵夫人からグリューネワルト伯爵夫人を陥れる相談を受けていました。ですが新入りの彼には伯爵夫人の下に近づく手蔓はありません。侯爵夫人の言い出す内容がエスカレートするにつれて、彼は怖くなった様です。それで助けてくれそうな人に手紙を書いた」
「しかし、いくら手紙を書いても差出人不明では助けたくとも助ける事は出来まい」
「助けは欲しいが、それを侯爵夫人に知られる訳にはいきません。ですから手紙はあの様な内容になったのです」
「侯爵夫人の姉上に対する…いやグリューネワルト伯爵夫人に対する敵愾心は皆が知るところだからな。誰が書いてもおかしくない内容にしたという事だな」
大尉は俺の言葉に頷くと、テーブルに用意してあったケトルからコーヒーをグラスに注ぎ、一気に飲み干した。どうやらアイスコーヒーの様だった。公が変な物を見たかの様に顔をしかめる。

 「アイスコーヒーなど何が旨くて飲んでいるのか理解出来んな。それにしてもフェルナー、何故お前には飲み物があって、我々には無いのだ?」
「アイスコーヒーなど不粋な飲み物と仰ると思いましたので…喋るのは小官ですし、喉も乾きます。閣下のお飲物は別の者が用意されるかと思いまして。考えが至らず申し訳ありません」
大尉は悪びれる事もなく笑っていた。彼が大きく手を叩くと、給仕が飲み物と茶菓子を運んで来た。大尉はブラウンシュヴァイク公の直臣のなかでは若い方だと思うが、こういう図太さが気にいられているのかもしれない。給仕が部屋を出て行くと、ブラウンシュヴァイク公は大きく息を吐いた。
「全く…大尉、続けろ」
「は…ですが、グレーザーの存在とは別に侯爵夫人を唆す方々が居たのです。彼はそれを知ってしまった。手紙を書くに至ったのはその事があったからです。小官とキルヒアイス少佐が接触した当初は、その存在に関しては怖くて言えなかったと言っていました」
哀れなのはグレーザーという訳か。片棒を担ぐ気もないのに一味に入れられそうになった…。だが黒幕が居るならそいつ等が実行犯を仕立ててもよさそうな気もするが…。
「それで大尉、黒幕は誰なのだ?」
「ミューゼル大佐、それにつきましては…」
「グリューネワルト伯爵夫人は皇帝陛下の寵愛を一身に受けておられる方だ。それに小官の身内でもある。この件については宮廷内の事情の考慮や忖度は出来かねる。小官の身内という事は置いておくとしても、至尊のお方の寵姫の命を狙う、というのは帝国への謀叛ととられてもおかしくはないぞ?」
大尉は無表情のまま俺を見つめていたが、根負けした様に大
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