敢闘編
第七十ニ話 戦いの後
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海を祈っております”
キルヒアイスからの通信は切れた。半月会わないだけでこうも懐かしい……とりあえず姉上が無事でよかった…いささか判断が難しい、か。またぞろ宮中の力学的なものがついて回るという事だろう、厄介だな…。
宇宙暦793年7月8日09:00
アムリッツァ星系、チャンディーガル、自由惑星同盟、自由惑星同盟軍、
ホテル・シュバルツバルト、アムリッツァ駐留軍司令部、
ヤマト・ウィンチェスター
「報告書は読んだ、ご苦労だったな。まあかけたまえ」
応接ソファを示され、着席する。
「急を要する事態だったとはいえ、本当によくやってくれた。シトレ閣下の仰る通りだったよ」
ルーカス長官代理は深々とソファに座るとそう言った。
「はあ…シトレ閣下は何と仰られたのですか」
「君なら難なくこなすだろう、とね。まあボーデン方面に向かったヤン大佐は大変だった様だが」
「恐れいります…小官もそう思いましたが、兵力配置が二方面になってしまった為にそうせざるを得ませんでした。ヤン大佐には済まなく思っています」
「貴官が気にやむ事はない。責任は私にあるのだし、貴官は与えられた権限を行使しただけだ。命令は正当な物だし、それはヤン大佐も理解しているだろう」
全くその通りなんだけど…やれと言われた側の身にもなって欲しいもんだ…。
「シトレ閣下は貴官達を高く評価している様だ」
「恐縮です」
「どうだ、このまま宇宙艦隊司令部に残らないか」
「…有難いお言葉ですが、辞退させていただきます」
「何故かな」
「…少々功績を立て過ぎました。小官の様な軍主流ではない人間が、宇宙艦隊司令部に入る。以前にも勤務した事はありますが、このまま行きますと不協和音の元になります。出る杭は打たれる、そして既に出過ぎている…そうはなりたくありません」
「…それはヤン大佐も同様かね?」
「ヤン大佐の考えは分かりかねますが、小官にしろヤン大佐にしろ、物分かりのいい上官の元でないと力を発揮出来ない、という事です…あ、閣下がそうではない、と言っている訳ではありません」
誹謗に近い言い方、と捉えられても仕方がない言い方だったけど、ルーカス長官代理は突然笑い出した。
「私に対して本音で物を言う部下を久しぶりに見たな」
「申し訳ありません」
「いや結構、結構。どうやら私は冷静で謹厳実直と思われているのでな。参謀達も遠回しな物言いばかりなのだよ」
「は、はあ…」
「そうだな、確かに功績を立て過ぎたかもしれんな。シトレ閣下が、高等参事官などと訳の解らない肩書を貴官に与えた意味がようやく解ったよ」
「…何と申したらよいのか判断がつきませんが、ありがとうございます」
「そうかしこまらんでもいい。では私の参謀長としての最後の任務を与える」
「はっ」
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