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第三十七話 退院その十五

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「お家に帰って」
「そうしてですね」
「お祖父さんとね」
 彼と、というのだ。
「一緒に過ごすのよ」
「いいですよね」
 ??は微笑んで応えた。
「お祖父様と一緒にいることも」
「楽しいでしょ」
「癒されます」 
 こうも答えたのだった。
「とても」
「そうでしょ」
「家族と一緒にいますと」
「そうよね。私もね」
 庚も微笑んで応えた。
「家族は好きよ」
「そうなんですね」
「だから貴方もね」
 ??もというのだ。
「本当にね」
「お祖父様とですね」
「一緒にいるのよ」
「そうすることですか」
「そう、そしてね」 
 庚はさらに話した。
「お祖父さんとお話もね」
「していくことですね」
「そうしていけばね」
 庚はさらに話した。
「きっとね」
「きっと?」
「貴方は今以上に幸せになれるわ」
「僕今でも幸せですが」
 ??は庚の言ったことの意味が分からず答えた。
「ちょっと」
「そうね。けれどね」 
「けれど、ですか」
「ええ、もっとね」
「僕は幸せになれるんですか」
「そうよ。だからね」
 ??にさらに言うのだった。
「貴方はね」
「もっと幸せになる為に」
「お家にもね」
「毎日戻って」
「お祖父さんと一緒に過ごして」
 そうしてというのだ。
「楽しくお話もして」
「幸せになることですね」
「そうするのよ、いいわね」
「そうしてきます」
 今以上に幸せになれるか、それはわからないままだった。
 ??は家に帰った、そして屋敷と言ってもいいそこに使用人達を除いては一人でいる祖父の前に来て挨拶をした。
「只今です」
「お帰り、霜月」
「??でなくてですか」
「そうだ、お前の本当の名前だ」
 祖父は孫に優しい声で告げた。
「いつも??と呼ばれているが」
「僕の名前は」
「そうだ、塔城霜月だ」
 こう言うのだった。
「塔城家の子だ」
「そうなんですね」
「そして私の孫だ」 
 優しい声でこうも言った。
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