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第三十七話 退院その十三

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「夢見が外れていることはね」
「それはですか」
「ええ、全くね」
 それこそというのだ。
「同じよ」
「地の龍の夢見もまた」
「外れてね」 
 そうなってというのだ。
「それでね」
「そのうえで、ですか」
「もうね」
 それこそというのだ。
「未来はね」
「わからなくなった」
「そうなったわ、けれどね」
 それでもというのだった。
「いいことでしょ」
「誰も死ななかったので」
「これ以上ないまでにね」
「そう言うのですか」
「そうよ、姉さんはもうね」
「夢見として務まらなくなっている」
「そうなってね」
 そしてというのだ。
「もうよ」
「わらわは夢見の役目を終えて」
「私のところに来るのよ」
「わらわは夢見です」 
 絶対にとだ、丁は答えた。
「このことはです」
「変わらないわね」 
「はい」
 ここでも絶対にと言った。
「何があっても」
「その考えもどうかしら」
 庚は無表情になって述べた。
「果たして」
「どういうことですか」
「言ったままよ、姉さんは夢見でなくなっても生きていられるわ」
 こう言うのだった。
「それでも」
「目は見えず耳も聞こえないわらわが」
「それでも命はあるわ」 
 これはというのだ。
「そして確かに見えないし聞こえないし喋れないけれど」
「それでもですか」
「姉さんは他の感覚で見えて聞こえているわ」
 目や耳が使えずともというのだ。
「だからね」
「いいというのですか」
「姉さんが生きているなら」 
 それならというのだ。
「もうね」
「それだけでいいというのですか」
「そうよ、早く夢見を終えるのよ」
 ここでまた微笑んで言った。
「姉さんが去れば」
「それからはですか」
「彼がいるから」
 玖月牙暁、彼がというのだ。
「だからよ」
「わらわは、ですか」
「もうね」
「夢見の仕事を終えて」
「静かに暮らすことよ」
「それは出来ません」
 今もだ、丁は拒んだ。目を閉じて静かにそうした。
「何があろうとも」
「やっぱりそう言うわね」
「わらわにとって夢見は絶対のことですから」
「この世に絶対のものはないわ」
 庚は今度はこう言った。
「だから姉さんの夢見もよ」
「外れてきているのですか」
「そしてね」
 庚はさらに話した。
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