第九十七話 食べられる幸せその十三
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「そうよね」
「世界第三位の」
「その日本の宮内庁の予算よりもなの」
「どっちも年間でね」
「それでなのね」
「将軍様の贅沢費の方がね」
北朝鮮は広く知られている様に世界の最貧国のうちの一国だ、全ては失政の結果であることも知られていることだ。
「多いのよ」
「馬鹿げるわね、つくづく」
「それで軍隊の予算が国家予算の四分の一で」
将軍様個人の贅沢費に合わせてというのだ。
「ミサイルや核兵器造って」
「打ち上げたりしてるのね」
「あの国はね」
「いや、とんでもない政治でもね」
「あの国は極めつけよね」
「実感するわ、とんでもない政治の国に生まれたら」
「幸せじゃないわね」
「北朝鮮で生きられるか」
「あそこ粛清もあるしね」
富美子はこのことも話した。
「弾圧とか」
「それだとね」
「もうね」
それこそというのだ。
「生きられることは」
「難しいわね」
「かなりね」
「そうよね」
「いや、本当にね」
北朝鮮はというのだ。
「世界の中でもね」
「生きることが難しい国ね」
「餓えと粛清でね」
「その二つの中で生きるってなると」
「もうね」
「かなり難しいわね」
「こんなものなんてね」
今度はだ、富美子は黄色いキャンディを口の中に入れて言った。
「それこそね」
「絶対にお口に出来ないわね」
「食べることさえ難しいから」
「それじゃあね」
「お菓子なんてね」
「食べられないわね」
「そうに決まってるから」
事実北朝鮮では菓子など口にするなぞそうはないことだ、この国では子供が可愛いと多くの人が食べものをあげて太らないか心配だと言うとそれはかなりの立場ということの証左となる。
「まあ食べられる人もいるけれど」
「将軍様ね」
「あの人はね」
この国の独裁者はというのだ。
「好きなものを好きなだけね」
「食べられるのね」
「けれどね」
「他の人は、よね」
「何かを食べるなんて」
そんなことはというのだ。
「難しくてお菓子なんてね」
「夢のまた夢ね」
「じゃあお菓子を食べられることも」
「何でもない様でね」
「充分幸せなことよ」
「それが出来るだけの艦橋にいるってことだからね」
「そうなるわね、今しみじみ思ってるわ」
富美子は実際にそうした顔になっていた、そのうえでの言葉だ。
「お菓子を食べられることもね」
「幸せね」
「それだけでね」
キャンディを舐めつつ言った、そのキャンディは実に甘くて美味かった。
第九十七話 完
2023・8・8
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