第九十七話 食べられる幸せその九
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「摂らないことよね」
「そうよね」
「特に煙草ね」
「煙草が一番駄目なのよね」
「癌にはね」
「そう聞いてるしね」
「未成年じゃなくても」
それでもというのだ。
「煙草は駄目ね」
「そうよね、煙草はね」
ウクライナの娘も言った。
「実はキーヴの親戚随分とね」
「煙草お好きなの」
「ヘビースモーカーだったのよ」
「ああ、それでなの」
「癌になったのよ」
「煙草はね」
「本当に鴈に悪いって思ったわ」
その親戚のことからというのだ。
「私もね」
「そうよね、さっきとは別の漫画家さんが若くして鴈になって」
「どうなったの?」
「あちこち転移してお口も除去したりして」
そうしてというのだ。
「まだ連載中の作品あるけれど」
「描けないのね」
「生きるだけで必死の」
そうしたというのだ。
「大変なことになってるみたいよ」
「じゃあその作品は」
「もうね、執筆どころじゃないから」
「未完に終わりそうなの」
「長い間続いていて」
その作品はというのだ。
「何度もアニメ化してるけれど」
「描かれる以前なのね」
「漫画を描くのも健康でないとね」
「出来ないわね」
「だからね」
それでというのだ。
「もう私その作品はね」
「未完のままだって思ってるのね」
「仕方ないわよ」
作者の人がそうした状況ではというのだ。
「西遊記をモチーフにした作品だけれど」
「中国の」
「そう、孫悟空が主人公のね」
「その作品はもう、なのね」
「むしろ作者さんには無理しないで」
富美子は心から思って言った。
「長くね」
「生きていて欲しいのね」
「そう思ってるわ」
「漫画描かなくてもいいのね」
「そりゃ終わらせて欲しいわよ」
その作品をというのだ。
「けれど癌があちこち転移して」
「除去もして」
「癌になった部分をね、腰も悪くされたし」
「癌だけじゃなくて」
「そのこともあるからだ」
だからだというのだ。
「もうね」
「長生きをなのね」
「そっちを優先して欲しいわ」
「深刻なことね」
「ええ、完結させて欲しくても」
読者としてはというのだ。
「そんな状況だとね」
「もうよね」
「無理しないで」
そしてというのだ。
「長生きの方をね」
「優先させて欲しいのね」
「何なら」
富美子は真剣に考える顔で言った。
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