第九十七話 食べられる幸せその八
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「言ってるの」
「そうなの」
「今抗癌剤使ってて」
「ああ、鴈なの」
「助かるっていうけれど」
それでもというのだ。
「抗癌剤使うとね」
「味がわからなくなるのね」
「何食べても泥の味だってね」
その様にというのだ。
「言ってるわ」
「そうなのね」
「そういうの見ても」
「健康も大事ね」
「そうよね、というかね」
「というか?」
「癌は怖いってね」
富美子に眉を曇らせて言うのだった。
「わかったわ」
「冗談抜きで進行早いと死ぬしね」
富美子も真顔で応えた。
「癌は」
「そうよね」
「日本でもね」
「癌で亡くなる人多いわよね」
「多いわよ、親戚でもいたわよ」
富美子は自分の血筋のことも話した。
「八十過ぎだったけれど」
「癌になって」
「発見が遅くて」
それでというのだ。
「見付かった時は手遅れで」
「それでなの」
「半年でね」
鴈が発見されてからというのだ。
「亡くなったわ」
「そうなのね」
「まあ八十過ぎてたし」
「充分長生きよね」
「そうだけれどね」
富美子はウクライナの娘に微妙な顔で話した。
「けれどね」
「癌でお亡くなりになったことは事実ね」
「ええ、それでね」
「残念に思ってるのね」
「私もね、これが若くてね」
「癌になったら」
「あっという間に進行して」
鴈は細胞のことである、その為若いなら若いだけ細胞の動きが活発なので進行も早くなってしまうのだ。
「すぐにね」
「手遅れになるわね」
「三十代でなって」
そしてというのだ。
「あっという間にね」
「そんな人もいるわね」
「よく聞くでしょ」
こうした話はというのだ。
「若くしてってね」
「そうそう、鴈ってそうなのよ」
「若いなら若いだけ進行早いのよね」
「それであっという間にね」
「お亡くなりになるのよね」
クラスメイト達も眉を顰めさせて言った。
「去年元気だったのにね」
「あっという間にとか」
「見付かったらもう手遅れとか」
「そういうのあるのよね」
「それが鴈なのよね」
「いや、親戚で鴈になったのその人だけだけれど」
富美子は苦い声で話した、天井組を食べても言葉はそうなっていた。そのうえでさらに言うのだった。
「正直なりたくないわね」
「全くよね」
「あんなのなりたくないわ」
「ストレスとかでなるっていうけれど」
「煙草とかでね」
「他にも発癌物質ってあるのよね」
「そういうのは気を付けてね」
そのうえでというのだ。
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