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第三十七話 退院その十一

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「昔通りだ」
「一緒にいるね」
「そうなる」
「必ず」
「そのつもりだ」
「三人か。そうなることを願うし」
 昴流は神威のその言葉を聞いて微笑んで話した、右目を覆う包帯はそのままだがそれでも言うのだった。
「そうなる様にもね」
「助けてくれるんだな」
「そうさせてもらうよ」
 神威に確かな声で答えた。
「今回気遣ってくれたし何よりも仲間だから」
「だからか」
「必ずね」
 約束する言葉だった。
「そうさせてもらうよ」
「ではな」
「宜しくね」
「その様にな」
「君達はずっと三人でいるんだ」
 昴流は優しい顔でこうも言った。
「それこそね」
「ずっとだな」
「そうだよ、僕は適わなかったけれど」
 このことは残念そうに言った。
「君達はね」
「一緒にだな」
「いるんだ」
「そうする」
「約束したよ、さて」
 昴流は神威との話が一段落するとあらためて言った。
「お料理もお酒も美味しいし」
「それでならでんな」
「うん、心ゆくまでね」
 笑顔での言葉だった。
「飲んで食べよう」
「昴流さんの退院祝いですし」
「そうしよう」
「そうしましょう」
 空汰が応えた、そうしてだった。 
 一同は昴流の退院祝いを楽しんだ、飲んで食べてだった。そこにいる者全員で楽しんだのであった。
 丁はこの夜夢の中で庚に訪問されていた、庚は丁を侮蔑した目で見据えつつ冷たい声をかけていた。
「彼の右目は治るわよ」
「それが何か」
「姉さんは彼の右目はなくなると言っていたわね」
「夢で見ました」
 丁は俯き目を閉じて答えた。
「わらわは」
「そうね」
「玳透は死に」
 彼のことも話した。
「そしてです」
「彼はね」
「右目を永遠に失った筈ですが」
「そうはならなかったわね」
「わらわの夢見が外れている」
 丁は俯いたまま言った。
「それは何故」
「いいんでなくて?姉さんが夢見でなくなったら姉さんでなくなるわ」
 今度は侮蔑に否定を込めて言った。
「そうなったら姉さんはどうするのかしら」
「それは」
「そうよ、姉さんはただそこにいるだけよ」
 そうした存在になるというのだ。
「まさにね」
「観えず聞こえる喋れない」
「そうしたね」
「何も出来ぬ者になると」
「そうなるわ、そしてね」
 そのうえでというのだ。
「私が姉さんを養ってあげるから」
「その中で生きよというのですか」
「そうよ、受け入れるのよ姉さん」  
 侮蔑の笑みで告げた。
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