38:はじめての友達
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ターだ。
ゆえに。
逃げ場の無いこの状況で、追い込まれたこの子がボクを殺そうとするのも、至極当然のことなのだった……。
「……ふふっ」
けれど、ボクは小さく微笑んだ。
――なぜなら、ボクには……なんの後悔も無かったから。 心は、ひどく落ち着いていた。
……こんな最期も、悪くない。
そう思えた。
一匹の仔馬を介護し、助けることが出来て……一時的にとはいえ、幻のユニコーンに心を許されたのだ。
きっと……天国のお父さんも、こんなボクを笑顔で迎えてくれる。
そう思った。
「…………おいで……」
ボクは上体を寝かせたまま……見下ろすユニコーンへと両手を伸ばした。それにユニコーンは抵抗しない。
そしてその顔を両側から手でそっと包みこみ、そのねじれた鋭い角を自分の胸にあてがった。
それから手をその鬣に回し、愛おしげに撫でる。
「……いいよ。ボクを殺しても。……だけど忘れないで」
今にもその角でボクの胸を貫き、突き殺そうとしている、胸の内にいるこの子にボクは……最期の言葉を囁きかける。
「――ボクみたいに……キミの事も、心の底から信じられる人が居るってことを……」
そしてボクはそっと目を閉じ……自分がポリゴンに散るその瞬間を待った。
……………。
……。
…。
「……………。……………………?」
しかし、その時は一向に訪れなかった。
思わず恐る恐る片目を開ける。
そこには……
「…………は? キミ……なに、してるの……?」
目の前のユニコーンは、思いがけぬ行動を取っていた。
この子はボクを突き殺すこともなく……何故かボクの腰辺りに鼻先を向け、ヒクヒクと何かを嗅ぎ回っているようだった。
「なにか探して――るのばっ!?」
ユニコーンは突如、その鼻っ面をボクの腰ポケットの中にズボッと突っ込んだ。
しばらくもぞもぞ動いた挙句、そして出てきたその口には……ボクが《趣味》の為に収集していた、アインクラッド中からかき集めた様々な木の実が詰め合わせてある麻袋が咥えられていた。
かと思えば……いきなりその袋を地面に叩きつけ、中身を盛大にぶちまけた。
「ちょっ!?」
ボクはもう何も言えず、パクパクと口を動かしながらその光景を眺めている事しかできなかった。
……さっきまでのシリアスは、とうにどこかへと吹っ飛んでいた。
ユニコーンは尚も鼻をスンスン言わせ、散らばる木の実を品定めしているようだった。こんな珍行動の意図は、アインクラッドきってのSAOモンスター愛好家であるボクでも、さっぱり分からない。
そしてついに動きがあった。顔の方向が定まり、一粒の木の実を口に含んだようだっ
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