38:はじめての友達
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復結晶を使ってやるなんて真似は超難しいけどナ。もし、レアモンスターの部位アイテムが欲しくて、かつ相手が安全マージン以下の相手だったら、試してみる価値があるかもナ。】
「こ、コレだっ!!」
この時ユニコーンがぎょっとした目でボクを見ていることに気づかないまま、ボクはそのパタムと閉じた本の表紙に思わずキスをし、アイテムウィンドウの中をまさぐった。
「あった!!」
そして、一個のピンク色の結晶体をオブジェクト化する。
《回復結晶》。
これはつい最近、大して多くないボクの全財産の大部分を犠牲にして購入したものだった。
平凡以下の中層のプレイヤーであるボクには余りに手の高過ぎる高額アイテムだが、究極の保身アイテムとなれば無理をしてでも欲しくなるというものだ。……恐ろしい事に、《攻略組》の人達はコレを当たり前のように何個もポケットの中に常備しているらしいが……
っと、そんなことは今はどうでもいい。
「これを使えば……キミをっ……」
ボクは傷口である、ユニコーンの後ろ左足に結晶をあてがおうとした。
その時。ユニコーンは、ふと……ボクの心情を、もしくはお財布事情を知っての事か……あたかも『本当にいいのか』『自分に使わなくていいのか』などと問いたげな目でボクを見上げてきた。
確かに、今のボクのHPもゼロになってしまう二歩手前。棺桶に片足を突っ込んでいる危機的状態だ。
けれどボクはユニコーンに、薄く微笑みながら指先で零れかけの涙をすくい、軽く首を振る。
「ううん、いいんだ……。ボクは、ボクなんかよりも……キミを救いたいんだ。だから――ボクを、信じて欲しい」
『……………』
ユニコーンは何も言わず――もしかしたら、鳴き声はもともと設計されていないのかも知れない――ボクを見つめ続ける。
ボクはそれにコクリと頷き、結晶を傷口にあてがう。そして、
「――ヒール!」
この時のお腹から出した声は、自分でも驚くほどハッキリと発声された。
そしてその一言だけで、つい先日買ったばかりのボクのほぼ全財産はあっけなく砕け散り……
「わぁ……!」
ゆっくりと回復しかけていたユニコーンのHPが一瞬で最大値まで全回復した。
それだけではない。
「すごい……傷が……!」
それと同じ位の、驚異的なスピードで足の傷口が見る見る塞がってしまったのだ。
そして数秒後には、心なしか体の純白さが増した、血色の良さそうな子馬がボクの膝に横たわっていた。
「ねぇ、キミ……今度は、立てる……?」
その声にユニコーンはよろり、と再び立とうとする。今度はボクが脇で支えながら。
ゆっくりと、感触を確かめるように……四本の足が、しっかりと地を踏む。
そして。
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