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第三十七話 退院その八

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「私が落ちそうになって」
「あの時か」
「神威ちゃんが手を伸ばしてくれて」
 幼い頃のその思い出を話していく、小鳥の頭の中ではその時の光景がまるで映画の様に忠実に再現されている。
「掴んでくれてね」
「何とか落ちないで済んでな」
「お兄ちゃん達が探しに来るまでね」
「ずっと小鳥の手を掴んでいたな」
「私の手首をね」
「木の枝のところからな」
「そうだったわね」
 神威のその言葉に頷いた。
「あの時に私はっきりと感じたわ」
「何をだ」
「神威ちゃんの心を」
 それをというのだ。
「凄くね」
「そうだったか」
「とても優しくて暖かいって」
 神威の心はというのだ。
「そのことがね」
「わかったか」
「とてもね」
 そうだというのだ。
「だから大変だったけれどね」
「それでもか」
「嬉しかったわ」
 こう言うのだった。
「本当にね」
「そうしたところ神威さんらしいですね」
 護刃は二人の話を聞いてにこりと笑って述べた。
「今はそう思えます」
「俺らしいか」
「いざという時は助けてくれて誰よりも優しい」
 そうしたというのだ。
「そして暖かい人ですから」
「俺はそうか」
「はい、今はそうだってわかりました」
「最初は何だって思ったわ」 
 嵐ははじめて会った時の神威を思い出していた。
「不愛想で攻撃的でね」
「あの時の俺はそうだったな」
「だからね」
 それでというのだ。
「私も思わず身構えたわ」
「そうだったか」
「ええ、けれど今は違うわ」
 嵐はこうも言った。
「私もね」
「護刃と同じ考えか」
「ええ」
 護刃の方を見てから神威に答えた。
「そうよ」
「そうか」
「そして彼女の話を聞いてわかったわ」
 今度は小鳥を見て話した。
「貴方はは子供の頃からよ」
「その頃からか」
「そうした人よ」
「そうなんだな、俺は」
「僕もそう思います、神威君はとても優しい人です」 
 征一狼も言ってきた。
「暖かくて」
「征一狼さんもそう言うんだな」
「そぷ思っていますから」
 それ故にというのだ。
「ありのままに」
「言っただけか」
「今の僕は。そして」
 征一狼はさらに話した。
「その優しさ、暖かさはです」
「ここにいる皆さんが持っています」 
 小鳥が言ってきた。
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